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第二十四話:孝乃先輩と夏休みの忘れ物

第二十四話

 二学期が始まって何か変わるかと言えば、何も変わらない。

「あー、だるい。学園なんて行きたくない、いつまでも寝て居たい」

 それが許されないんだよなぁ。許されたら間違いなく将来は家に就職することになるぜ……。

「将来の夢はS.H.S.A(Special.Home.Security.Army)です」

 なんて進路調査には書けない。

 身体に鞭打って学園へと向かうと南山さんが手を振っていた。

「おはよう」

「おはよう、南山さん。今日から学園なんだねぇ」

 俺のため息をどうとったのか、呆れていた。

「もしかして夏休みの宿題、やってないとか?」

「いや、まぁ、ほんのちょっとだけね……埋めてないところは……あっ」

 後ろから歩いてきた誰かにぶつけられた。ふらりとなったものの、何とか立ち止まる。

「あ、ごめんなさい。……って、なんだ、冬治か」

「何だ冬治かって全国の冬治くんに失礼でしょう」

 振りかえった先には素知らぬ顔をした北村先輩が立っている。俺と違い、何かしら成長を感じさせる表情をしている。

「髪の毛切ったんですね」

「ええ少しだけ短くしたわ。意外とそういうところみてるのねぇ……それで、冬治、ちょっと夏休みの宿題のどこが出来ていないのか見せてみなさいよ」

 まったく脈絡のない(というわけでもないのか?)質問をされて俺は首をかしげる。

「ここでですか?」

「早く、忙しいんだから」

 有無を言わせないいつもの調子についつい俺は宿題を取り出して見せる。

「ふん、この程度できないなんてダメよ」

「はい、すみませ……って、北村先輩は三年生じゃないですか」

「何言ってるの。受験で楽をしたいのなら慢性的な苦労を負うべきよ」

 そう言うとあっという間に解答欄を埋めてしまった。

「あの、北村先輩……でしたか? それじゃあ四ヵ所君の学力があがるわけじゃ」

「わかってるわ。冬治、放課後わたしの教室に来なさいよ」

 言うだけ言うと北村先輩は右手をあげて行ってしまった。

「……北村先輩、何かあったのかな」

 南山の言葉に俺は首をかしげる事が出来なかった。

「人が変わってるもんなぁ」

「よく四ヵ所君の所に来て一緒に逃げ回って居た時はもうちょっと感情の起伏が激しい人だと思っていたけど」

 亜美先輩と時雨先輩の仲のよさを見てどうかなったのだろうか。いや、そんなわけでもないだろう……何せあれから一カ月以上経っている。

 その事を北村先輩に聞くのは何だか嫌だったけど、どうせ今日の放課後会う事になるのだ。その時に聞いておけばいいだろう。

 二学期一日目なのであっというまに時間は過ぎ去り(夏休みの宿題をしてこなかった友達二人の悲鳴が聞こえたが)気付けば放課後。

「冬治ぃ」

「冬治くーん」

「うわ、ゾンビだっ」

 全力疾走する最近のタイプではなく、風情を感じさせるゆっくりと歩いて迫ってくるタイプだ。

「お前は夏休みの宿題やっちゃうような人間だったんだな」

「ぼくたちの心はいつも一つのはずだよね」

「空欄すらないってどういうこったい裏切り者」

 散々ぶーたれる二人から逃げるため、俺は事情を説明することにした。

「なるほどねぇ」

「そっか、あの『どきっ、ゆりゆりしちゃってマジ大変』な話は終わったんだ。でも、受験生から勉強を教えてもらうなんてぼくだったら干上がっちゃうよ」

「ま、適当に脳みそ鍛えてもらえよ。冬治にはそれがお似合いだ」

「ぼくらは邪魔するといけないから遊んでくるよ」

「裏切り者め」

 元から誘おうとは思っていなかったのであっさりと手を振った。

「四ヵ所君」

「あれ? 南山さん」

 少し離れた席から南山さんが顔を出す。その手には鞄が握られていた。

「これから北村先輩のところへ一緒に……」

 何かを言おうとしたところで教室の後ろの扉が開いた。

「冬治、よく考えてみたら教科書とか全部家に置いてるのよね。悪いんだけど、わたしの家まで来てもらうわよ」

「え、ああ、はい。それはいいですけどちょっと待ってください」

 南山さんの方に視線を戻す。

「それで、何か言おうとしてたよね」

「あ、ううん。何でもないよ。勉強、頑張ってね」

「ありがとう。北村先輩、行きましょうか」

「ええ」

 一学期は良く駆けまわっていた廊下を歩く。

「あれから亜美先輩に追いかけられる事はありますか」

「あるわけないでしょ。あり得ないわよ……彼氏がいるんだから」

「えーと、最近北村先輩性格変わってますか?」

「……」

「先輩?」

 彼女の方を見ると不思議そうな顔をしていた。

「どうかしたんですか」

「うーん、あんたが言うのならそうなんでしょうね。友達からも言われたからさ。どこらへんがどう変わったのか具体的に説明してくれない?」

 自分がどう変わったかなんて本人にはわからないのだろうか。疑問に思いつつ俺は断言した。

「まず、落ちついています」

「前からそうじゃないの? 頼り甲斐のある先輩だったでしょ」

 そうだっただろうか。

「我がまま、おちつきがない、せっかち、噛みつきやすい性格でした」

「あんたねぇ……」

 お、片眉があがったぞ……元から沸点低い人だったからちょっとおちょくるだけで爆発するはずだ。

 しかし、俺の意に反して爆発することはなかった。

「はぁ、いいわよ別に。冬治がそういうのならそうなんでしょう」

「それです、それ」

「ほら、ついたわよ」

 それ以上おちょくる事も出来ずに北村先輩の家に中にお邪魔する。あの日となんら変わらない部屋が其処にはあった。

 ただ一つ変わった事と言えば机の上に置いてあった集合写真が無くなっていた。

「……」

「ほら、女子の部屋をじろじろと見てないで座りなさい」

「あ、はい」

 調子が狂うなと思ってそのまま腰を下ろす。先輩は机からいくつかの教科書と参考書を取り出してきて俺の近くに座った。

「あ、先輩……俺もう宿題提出しちゃったんですけど」

「わかってるわよ。頭の中にどれを使ったものか覚えているから安心しなさい。冬治は数学が苦手だったみたいね」

「はぁ、まぁ、そうです」

 それからみっちりと三時間復讐をさせられてへばっているところにお茶菓子を出される。

「あんた、あれから南山さんと進展あったの?」

「ぶほっ、げほげほげほげぇ……いきなり何ですか」

 あぶねぇ、部屋を汚したら今度こそ怒られるぜ。

「今朝も一緒に居たし、わたしがあんたの教室に来た時も話をしていたみたいだから仲が悪そうじゃないみたいだけどさ」

「ま、まぁ、友達ですよ」

 うん、友達だ。夏休み特になにかあったわけでもないしな。

「足りないのはやっぱり度胸ね。今度の日曜、わたしとデートするわよ。そして、その次の週にあの南山の約束を取り付けておきなさいよ」

 親切の押し売り、有難迷惑、その他ちょっとした言葉が脳内で加速していくのだった


もしも悪魔に魂を売れて能力を得られるのなら……全力で文章力を要求します。おまけにアイディアも要求したいですね。そうすれば北村孝乃編ももっと面白くなることでしょう。何が言いたいかと言うと夏休みがある人たちは夏休みですね。気づけば八月だよ。どうりで暑いわけだ。

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