第二十一話:アオインと停学
第二十一話
一学期末のテスト解答を見つけたのは俺だ。教師に渡そうとして悩んでいると南山さんが寄ってきた。
「……もしかしなくてもこの前の女子更衣室のことを思い出してるよね」
「ちがっ……というのも間違いじゃないかな。これが原因だよ」
引かれそうになったのですぐさまテストの解答を南山さんに渡す。
「これは……」
「この前も話したでしょ? それが其処にあったんだよ」
「何で早く先生に渡さないの?」
「詳しく話をすれば俺が女子更衣室に行っていた事が確定するでしょ。かといって、見過ごすわけにもいかないし今度のテストで使ってやろうと思っても答えが変わっているのなら意味がないしなぁ」
「私が持っていくのがいちばんだよ。不正せずに四ヵ所君は頑張ってくれるって信じているから」
「……ああ、そうだな」
信頼は要らないから俺の彼女になってほしいなぁと心の中でぼやき、俺たち二人は席を立った。
早速職員室へ行こうとすると目が血走っている女性教師が俺達を止めた。ヒステリックで有名な先生なので何となく、嫌な予感がしていた。
「貴方達」
「はい?」
「それを盗んでいったのは貴方達だったのねっ」
「は?」
南山さんに食ってかかろうとしたので間に割って入ると胸倉を掴まれる。
「どうしてくれるの? 貴方達のせいでわたし、相当怒られたのよっ」
「知りませんよっ。悪いのは落とした先生でしょう?」
「そんなわけないじゃないっ」
何がそんなわけじゃないのかさっぱり分からない。幸いだったのは職員室から先生達が何事かと飛び出してきた事だった。
「はなしてっ。ようやく犯人を見つけたんですよっ」
「犯人だって?」
教師数人が南山さんの手に握られている茶封筒へと視線を向ける。南山さんを隠すようにして俺は前に立つ。
「言いがかりです。俺達はこれから職員室へ向かうところだったんですよ」
「……とりあえず君たちも一緒に来てほしい。小塚先生も一緒に来てください」
幸いだったと思った事は意外とそうでもなかったらしく本当に犯人を護送するかのような感じで先生に囲まれている。そのまま職員室の奥にある会議室まで連れて行かれた。
「それで、どっちがこれを見つけたんだ」
ここまできたら仕方がない……南山さんに迷惑をかけられないからな。
「私です」
「俺です」
静まり返った会議室に俺と南山さんの声が同時に響いた。タッチの差で南山さんの方が早かったけど、気にしない。
この言葉に生活指導の先生は眉をひそめた。
「なんだ、かばい合っているのか」
「違いますよ」
南山さんの前に右手を出して俺が先に口を開いた。
「俺が見つけたんです。女子更衣室で」
「……女子更衣室だと?」
眉がつり上がるのを確認する。ここまできたら黙って居る必要はなかった。
「はい、と言っても覗きに行っていたわけじゃないんです。実はこの解答が女子更衣室に在るんじゃないかという噂を聞いて探しに行っていたんですよ」
「本当か?」
「ええ、この前の水曜日の放課後に先生達が女子更衣室を探す前に回収したんです」
「どうしてそんな情報まで知っているんだ」
そういえば非公式だったかな。
「その日の夕方、たまたま前を通りかかったんですよ」
「ますます怪しいな……それで、お前はどうしてこの解答を手に入れようとしたんだ」
南山さんがまた何か言おうとしたのでそれより先に言葉を口から出す。
「理由ですか? ただ本当にあるかどうか調べるだけでした」
しばらく俺を見ていた生活指導の先生は鼻を鳴らしたのだった。
「それで、どうして南山と一緒に居たんだ」
「女子更衣室で拾ったものだという説明をしなくちゃいけませんからね。南山さんに拾ったと言って届けてもらおうとしたんです」
今更ながら学園のポストにでも突っ込んでおけばよかったと思う。
「筋は通っているなぁ……この件に関してはお前を信じよう」
「よかった……」
それまで黙っていた南山さんがため息をついた。
「だが、女子更衣室に入りこんだことについては終わらせるわけにはいかないな。この後、職員会議で話しあうだろうから……放課後職員室に来るように」
「え、ちょっと待ってください先生」
南山さんがそう言ったものの、先生は取り合ってくれない。
その日の放課後、俺が女子更衣室に入りこんでいたと言う噂は瞬く間に広がっていた。女子からは変態覗き魔のレッテルをはられ、男子からもエロ魔王と呼ばれた。
ついでに、俺に下された処罰は停学一週間だった……その間に期末が含まれているところを見るとこれは……どうなるのだろうか。




