第二十話:孝乃先輩と解除の計画
第二十話
俺が北村先輩の事を助けているのはあくまで南山さんからそう言われているからであって、本心じゃなかったりもする。
「惚れ薬を使って失敗したのは俺じゃないしなぁ」
南山さんから言わせてもらえば学園内で不純異性交遊……ではなく、不純同性交友もダメだそうでそうならないようにするのが俺の仕事だそうだ。
廊下を爆走しながら、命の危機に二回ぐらい瀕しながら日々が過ぎて行く。
何とか夏休みまで逃げ切ったので北村先輩は引き籠り生活を続けながら受験勉強をしているそうだ。最近、近くをよく黒塗りの車が徘徊しているところを見るとそろそろ突撃するのではないかと不安になる。
「ん? あれ? 別に学園内で北村先輩が襲われなければ南山さんとの約束も守らなくていいんじゃないんだろうか」
そう思った矢先に俺の携帯電話に着信があった。みやっちゃんからだ。
みやっちゃんにこれこれこうしてこうなったと近況を伝えていたのでどうやら打開策を考えついたらしい。俺は早速その内容を聞いたのだった。
「つまり、大本の天導時時雨先輩を引っ張り出してくればいいのか」
「……うん、彼に抱きしめてもらえばわたしがどうにかするから」
一騎当千のみやっちゃんがいてくれれば余裕だろう。その後、彼女から計画を教えられたのであった。
北村先輩の番号に電話をかけるとすぐに出てくれた。
『もしもし?』
「俺です。冬治です。実は惚れ薬の解除方法がわかったので連絡をしました」
『よかったぁ。これで霜崎の顔を見る必要もなくなるのね』
「必要が無くなるかどうかは分かりませんけどね。あ、出来れば通信が傍受されているかもしれないので俺の家に来てくれると助かるんですけど」
これはみやっちゃんから言われた事だ。どうも霜崎グループには黒いうわさがあってそこの娘である(黒塗りの車に乗っているから只者ではないと思っていたが)亜美先輩は結構なりふり構わないところがあるそうだ。
『はぁ? あんた、馬鹿じゃないの? 今の状況で外に出たら黒服に一発で捕まるわよっ』
「あの、黒服って……映画の見過ぎでしょう?」
『本当よっ。どうも霜崎側が変に誤解しているみたいで喧嘩している親友と仲直りしたいと思っているみたいなのよっ。亜美はそれに乗っかって有無を言わさずわたしに会うつもりだわ』
娘の一大事にグループが参戦してくるのか甚だ疑問ながらそれならそれで計画を急がなくてはいけない。
「わかりました。じゃあ俺がそっちに行きます」
『二十分以内にね。あっちの監視の休憩時間を狙って家に入ってきなさい』
「ところで、俺北村先輩の自宅知らないんですけど」
その後、五分ほど罵倒された後に学園近くの商店街を抜けた先に在る北村という家だと教えられた。やたらアバウトである。
こんな教え方で着くのかと少々不安になりながら現地へと向かう。
「あった」
商店街が終わってすぐのところに北村と書かれた一軒家が立っていた。なるほど、確かに黒塗りの車がうろついていてひそひそと主婦たちが話をしているではないか。
「きっとこれが夏休み始まってから続いてるんだよな」
北村先輩からの合図であるワン切りがあり、俺は玄関を勇ましく開ける。
「……おじゃましまーす」
勝手に入ってくれと言われているので躊躇なく中に入った。
「遅いわよっ」
「いや、急いできましたって。その証拠に汗かきまくりです」
汗でシャツが張り付いているまんまだ。タオルなんて持ってきていないからこのままにしておくしかない。
「ふ、ふんっ、それならいいわ。クーラーついてるからわたしの部屋に行くわよ」
普段だったら部屋に入れさせてくれないんだろうなぁとくだらない事を考えながら部屋に入る。
「あ、女の子の匂いがする部屋ですね」
「あんた、いますっごく失礼な事を口走ったわよ」
「幻聴ですよ……へぇ、北村先輩の部屋はこうなってるんですね」
パステルピンクとか、ブルーの家具が置かれている。信じられない事に亀さんのぬいぐるみとかパンダのぬいぐるみなんかもおかれている。
机の上には霜崎亜美先輩、天導時時雨先輩と思われる男子生徒、そして北村孝乃先輩……を含めた三年生の集合写真が置いてあった。
「じろじろ見るなっ」
「すみません。じゃ、早速計画の内容ですけど」
「お茶、おいてあげてるんだから飲みなさいよ」
「あ、はい」
すでにお茶までセッティングされていた。
「お茶準備してくれてたんですね。ありがとうございます」
「別に、わたしが部屋から出ている間に家捜しされても困るからね」
そっぽを向いてそんな事を言われてため息が出る。家探しなんてするわけがない。
「えーと、それで計画の方なんですけど……霜崎先輩と一緒に夏祭りに行ってもらいたいんです」
「はぁっ? あんた、わたしを裏切る気?」
「いや、これには続きがありますから落ちついてくださいよ。ついでに天導時時雨先輩を呼んでもらいます」
「呼んでどうするのよ。今のあの子はわたしにメロメロなんでしょ」
「こっちが何とかします。一瞬でもいいですから亜美先輩と時雨先輩を触れさせてください。そうすれば、亜美先輩から追いかけられる日々は間違いなくなくなります」
「信じていいんでしょうね?」
「任せてください。あ、当日は浴衣を着てくるのはやめてくださいね。少しは知ってもらうと思うので」
「……はいはい、わかったわよ」
ああ、きっとこれがなければ夏祭り南山さんを誘って一緒にいけていたんだろうなぁ。




