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第十七話:アオインと波乱の解答

第十七話

 体育祭を経てそれなりに南山さんとは仲良くなれたと思う。メールを送ったら返ってきたりするしな……って、これは当然か。

「しかして、たとえ仲良くなろうとこの状況はやヴぁい」

 どういう事かというと友人に騙されて女子更衣室に入りこんだ挙句、ロッカー内部に待機していると言ってもらえれば理解できるだろうか?

 いまいちわかっていない人もいるから説明させてもらうと最近こういうのに対して世間の目は非常に冷たい。

 すけべという目で残りの学園生活を後ろ指差されて過ごせるならまだいい方である。世間からは性犯罪者予備軍という不名誉なレッテルを張られ、停学ではなく限りなく退学に近い自主退学させられることもあるのだ。

 まぁ、覗きで来たわけではないんだけどな。

「自分の未来をかけたこの戦い……燃えるだろう?」

「くそっ、今度の期末テストの解答があるとか下らん戯言に俺が引っかかるとは……」

「いいやぁ、この情報は本当だぜ。担任の先生がぽかしてここのロッカーのどれかにわすれてるんだよ。今日の放課後に問題の先生だけじゃなくて他の先生も探しに来るんだと」

 探し始めて数分後、女子の気配を察知した友人は素早く掃除用具入れの中に身を隠し、俺は手近なロッカー内部へと入りこんだのだった。

「ふー、本当、ばっかじゃないのかなぁ。こんな夏のさなかにマラソンさせるなんてさ」

「別にいいと思うよ。つかれたけどね」

 ガヤガヤし始めた室内に南山さんを見つける。ついでに七色も見つけた。

「……これは絶好のチャンス……いや、待て」

 思いなおす。ラッキースケベかもしれないし、ちょっと違うけど据え膳食わぬは……というものもあるだろう。

 それでも、好きな人に対しては……真摯でいたかった。ま、変態紳士でもいいけどさ。

「ん?」

「……」

 このままだと確実に見つかる。何せ、俺が隠れているのは彼女のロッカーだからだ。

 体操服に手をかけたところで俺の送ったメールが彼女の元へようやく届いたようだった。鞄はロッカーの中になかったからこっちを開けるよりも先に携帯電話を確認するだろう。

「誰から?」

 七色が覗きこんできたので少し慌てるも、件名には一人だけで見てねと打ってある。

「ごめん、大切な要件みたいだから」

「そっか……ということは冬治君もしかしてついに」

 勘違いしてにやにやしている下着姿の七色を見たので一応、拝んでおいた。

「あいつブラジャー必要ないんじゃね」

 これで俺とあいつの中にわだかまりとかは無いと思うんだ。

「!」

 どうやら、南山さんはメール内容を確認したらしい。すぐに顔色を変えてこっちを見始めた。

「あ」

「……」

 そして、目があった。今後はどうなるか分からない。

 すぐさま何かが隙間にかけられて外の様子を確認できなかった。まぁ、もとより見ようと思っていなかったけども……やせ我慢だけどさ。

 殆どの生徒が出て行ってようやくロッカーの扉が開けられる。

「ふぅ、びっくりしたよ」

「本当、俺も驚いてる」

 首だけ出してため息をひとつ、そんな俺の頭にチョップが降ろされるのだった。

「ぐあっ」

「……あのさ、何でこんなところに居るの?」

 きっと死んだらこんな感じの人から裁かれるんだろなぁと思いつつ事情を説明した。

「本当は覗こうとしていたんじゃ?」

「それなら俺がわざわざメールを送るわけがない」

「下着を狙っていた?」

「今頃俺の頭にはブルマがかぶさってるぜ」

「……じゃ、やっぱり事故なんだね」

「ああ、信じてもらえるかは自信がないが……赦してくれるのなら何か提案してくれればいい」

 それでこれからの生活が保障されるのなら儲けものである。

「じゃあ、夏休みは毎日補習に出てくる事」

「……え」

「何でもいいんでしょ? 四ヵ所君の学力もアップするしいいことづくめだよ。それに、下心がないのなら拒否しないよね」

「俺、勉強超大好きだ」

 心底思う事は南山さんが悪い人間じゃなくてよかった、だ。この人が悪魔だったら今頃俺は一勝奴隷にされていただろう。

「いや、ありだな」

「え?」

「あ、夏休みに補習することだよ。ある意味青春だなーと」

「それよりいつまでここに居るの? 着替えたいんだけど」

「悪いな」

 出る途中、茶封筒を見つけた。

「……嘘じゃなかったんだな」

 中にはテストの解答が書かれていた。どの道、俺は補習に出なくちゃいけないからな。こんなものは必要ない……ということで、友人にメールで知らせようとすると階段からのぼってきた。

「やぁ、冬治」

「やぁ、冬治ってお前……中に居たんじゃないのか?」

「ああ、そうだったな。冬治は転校生だった。ここの更衣室の掃除用具入れはちょっとしたからくりがあって通気口に繋がってるんだよ」

「……そうかい」

「ま、解答も見つけられなかったし冬治が女子に袋叩きにされただけかぁ」

 一発殴りたかった。

 この解答が後に面倒な事になるとは俺も友人も誰も考えていなかった。


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