第十一話:本入道と解除への第一歩
第十一話
惚れ薬を飲んでちょっと厄介な事になっている少女と知り合って早一カ月。気付けば中間テスト前に成っているのだ。
もちろん、惚れ薬を解除する方法も探してはいるんだけどな、成果が無いなら意味が無いと言うか……。
「……やる気、でないから」
頼りの綱であるみやっちのやる気ない宣言で俺と西牟田紗生は袋小路に迷い込んだみたいなもんだ。
「とりあえず学園生ですし……あの、中間テストを乗り切りましょう」
「だな。右羽津学園に入学してから初めてのテストだろ? がんばれよ?」
「はい」
惚れ薬の事もあるので二人で行動することも多くなった。それに七色を加えて三人で行動することもある。
今日は俺と紗生の二人が図書館で勉強している。
「こことここは終わった……っと、紗生、それは何の本だ?」
「惚れ薬を作る本ですよ」
「そんな眉唾な本が置いてあるのかよ」
俺の疑問に紗生は顔を半分隠して応えてくれる。
「あの、やっぱり女子生徒とかは恋のおまじないを信じる方ですから……あ、男子生徒が信じちゃ駄目だとは言ってませんよ?」
「……悪かったよ、マジで」
薬の一件がいまだに解決してないもんだから、全く頭が上がらない。多分、いや、絶対にこれが解決しても頭が上がらなさそうだ。
「それで、役に立ちそうなのか? 恋のおまじないの安っぽい本でも効果を解除できるんなら足を向けて寝られないけどな」
「ここに材料、のっているみたいです。これは、作るほうですけどね」
どれどれと覗きこんでみるとかすれた文字で色々と書かれていた。
どうやら男の子が使う惚れ薬、女性のみに効果がある惚れ薬と言った具合に色々と種類が分かれているようだな。
「……吸血鬼の唾液、吸血鬼の体液、魔女の涙、狼男の毛かぁ……本当に効果がありますって書いてあるけどさ、この四つを手に入れるよりも努力して性格変えたほうがてっとり早そうだぜ」
「でも、吸血鬼を一人見つければ体液と唾液が手に入りますから実質三つでいいですよ?」
「あ、うん……そうだな。まー、あれだ。これはあくまで惚れ薬の作り方だから解除するための薬を作るべきだろ」
もしかして惚れ薬を解く為の薬も何種類もあったりするんじゃないか……俺の疑問は杞憂に終わった。
「解毒剤の作り方、書いてますよ。一種類しかないみたいです」
嬉しそうにそう言った紗生の手元を覗き込むと材料も書いてあった。
てっきり、破り去られているかと思ったけど誰かが空気を呼んでくれたようだな。
「どれどれ……惚れた相手の血、惚れた相手の生き肝」
「あの、すみません冬治先輩……」
「待った、そのカッターナイフは何のために握っているんだ? いや、話さなくていい……おっと、こっちにも解除方法が載ってるぜ?」
慌てて指差した先を紗生は何とか見てくれた。それでもなお、彼女の手にはナイフが握られていたりする。
「惚れた相手に幻滅する……ですか」
「成るほど、薬の効力が切れる程の心底呆れかえる姿を紗生に見せればいいのか」
これならわざわざ血まみれ沙汰にならなくていいな。
ほっとする俺に紗生は決断したようだ。
「あの、やっぱり生き胆のほうで……」
「待ってくれ。確かに俺が悪いけど、まずはこっちの呆れる方を頑張ってみないか?」
「……好きな人の情けない姿を見るのならわたし、鏡に映った先輩を刺します!」
物騒な発言をし始めたので右手で口を押さえておく。
「わかった、お前の気持ちはわかったからちょーっと黙っていようね? ここは図書室だからさ」
「むーっ」
静かにしてから俺はため息をついた。
「こりゃあ、半年、いや、一学期以内に何とかしないと命なさそうだな」
後輩に情けない姿をさらすのは嫌だ。しかし、当然ながら命に比べればとても安いもんだぜ。
それから俺と紗生は二人でどうすれば幻滅するかを練っていった。
「生き胆とかどうでしょう?」
「……俺はすっぽんぽんで不思議な踊りを踊ればいいと思うんだ」
「そうでしょうか……わたしは確実な方法を取るべきだと考えます」
「なに恥ずかしげに顔をうつ向かせているんだ。手に持っている本を置きなさい。その裏にナイフを隠しているでしょうが」
こうして、俺と紗生の話し合いは人様に聞かせられないような内容だったりする。決行は中間テストが終わってすぐという事になった。




