あ
※表題は「あんじゅうと」と読んでください。
きょうはあいうえ、きのうはさしす…(母の少女時代の日記より)
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3月31日
提出課題
※お話しいただいた主旨に合っているかどうか自信がありませんが、とりあえず提出致します。よろしくお願い致します。
ある人が言った。
「人生は百科事典の様なものだ」
誰が言ったかは忘れた。どういう意味で言ったのかも忘れた。しかし今、よくよく考えてみると誠にその通りである。万物を網羅しているようで、そこに記載されているものは世の中のほんの一部でしかない。実生活で役に立つ知識など殆ど無い。それは博識とか、物知りとかいう人が大して役に立たないのと同じで、知るも知らぬも五十歩百歩であるという事を示唆している。恐らく人生もそんなものだ。色々なものを包含しているけれども、実は大して意味がない。大して役に立ちもしない。それでもそこにれっきとして存在する。大して意味の無いものがただそこに存在する。それはそれでとても良いことだと思う。
浩瀚な百科事典はそういうわけで、一人暮らしの俺の狭い部屋では置き場所に困り、捨てようかどうか迷っていたところ、クローゼットの中にちょうど良いスペースを見つけたので、とりあえずそこにしまわれた。もう開くこともないだろうが、何となく捨てるのは惜しい気がした。しかし考えてみれば、インターネットの普及した現代では百科事典など益々必要なかろう。考えれば考えるほど必要ない。金持ちでもないのに三万円も払って買った意味は、確実にない。俺はまた無駄な買い物をしてしまった。
「そうか…、そうかねそうかね」
俺は一人つぶやいた。俺は独り言が多い。特に意味はない。朝はどうにも調子が出ない。