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閑話

お久しぶりです! 

次の章がうまくまとまらないので、とりあえず閑話でごまかします!

今回イリスたち出てきません! 名前だけ出てきている残りの幼馴染が出てきます!

ちょっと予定より早かったけれど、きにしなーい。



 イリスが行方をくらませた頃、フィラディア第二の都市ルブリ―――


 執事から手紙が届いていると渡され、その送り主の名前に珍しいと目を瞬いた。

 マイラ=サディ

右肩上がりの達筆な字で書かれたそれは、ここよりずっと南で弟妹たちと暮らす幼馴染の名前だ。

 書斎として使っている部屋で机の一番上の引き出しからペーパーナイフを取り出す。出来るだけ綺麗と細心の注意を払いながら開けば、素っ気ないことに紙が一枚出てきた。便箋一枚どころか、少し大きなメモ用紙程度の大きさの紙。手近にあったデザイン用の紙なのだろう。

もう随分会っていないのだからもう少し厚みある手紙をくれてもいいと思うのだが、彼女の興味がこちらに向いていないことは十二分にわかっていた。手紙をくれるだけまだいい方なのだろうと自分を慰める。



イリスが王都に行くわ。

 手を貸してあげなさい。

 ついでに、あの馬鹿の情報も集めておいて。

 しっかりやるのよ。


            マイラ


 

 何度読み返してもそれだけだった。

 小さいと思った紙が、余白で大きく見えてくる。

 堪らず苦笑が漏れだした。

 「本当、変わらないな。僕の名前も書かずによく届いたよ」

 名前を呼ばれるのは、イリスだけ。

 彼女がマイラにとって特別なのはわかっているが、少し嫉妬心を覚えさせられる。けれど、そんな彼女もまた自分の幼馴染の一人だ。大切な人。

 ―――しっかりやるのよ。

 自分に与えられた言葉はたったの八文字だった。鼓舞するようにも頼りにならないと叱りつけているようにも思えるが、それでも以前の彼女を思えば、嬉しい限りだ。

 記憶に蘇るのは、父の負の遺産と母の死でぼろぼろになった思い人。

 溺愛する弟妹でさえ切り離そうとした彼女を繋ぎとめられたのは、自分ではなく、同じ年の幼馴染の少女だった。

 (だから、僕は君に勝てなくてもいいと思っているんだよ)

 悔しいけれど、その時点で勝負は付いてしまっているから。

 そんな少女のピンチ。

 マイラが何もしないわけないだろうが、微力ながらも自分の力を求められたと思っていいのだろう。あの時は、求められるどころか力があるとも思われなかった。事実、何の力もなかった。

 「こういう時、実家が立派でよかったと思うよ」

 一人ごちると、手早くレターセットを引っ張り出した。

 適当に思いつく有力者の名前を書き込んで、またどれにも同じ内容の文章をさらさらと書いていく。

 

 「まったく、困った幼馴染夫婦だよ。そろそろ自分のことに集中させてほしいだけどな」


 また、長年の思い人はイリスに集中してしまうのだろう。

 でも、折角だからここら辺で少しは役に立つ男だと思ってもらうのも良いかもしれない。

 くすりと底知れない笑みを浮かべて、男は手紙を書きあげた。



※※※※



 同時刻、王都グラシアン―――


 見目良いメイドがおずおずと近づいてきた。頬を上気させ、身を縮こまらせながらも、上目使いでこちらを伺ってくる。

 その少女メイドの瞳が、鮮やかな黄緑色をしているのに気付き、ふと目を止めた。

 「君は……」

 メイドが期待した目で顔を上げたので、そこで違うとはっきり気づいた。

 「いや、なんでもない。ところで、何の用だい?」

 メイドはがっかりしたようだったが、そのままおずおずと手紙を差し出した。手紙の数は、二通。直接渡されるということは、私信だろうか。

 「ありがとう。仕事に戻ってくれ」

 受け取って名前を確認すれば、どちらも見知った名前。だが、望んでいた人の名前ではなかった。

 どちらも小五月蠅いが、どちらかと言えばまだマシな方を先に開いた。


 イリスがそっちに行く。

 邪魔はしてやるなよ。


       カーダ=モルツ


 しっかり釘を刺してきた幼馴染に眉を寄せながら、さらにもう一通開く。

 今度は、さらに口うるさい内容だった。


 ルークへ


 お前がどう思おうが勝手だが、イリスを優先して考えてやれ。

 あいつがいないからって、お前が好き勝手していいわけじゃないんだからな。

 しつこい男は嫌われるぞ。

 P.S.

見合いでもしろ。 


       ジージック=モズ


 こちらは余計なお世話だと破り捨てた。おまけに火にくべてやる。

 確かに、二人とも言いたいことは同じなのだろうが、それでもこれ以上ないチャンスだった。

 玉砕覚悟どころか、もう既に何度か玉砕をぎりぎりで回避してなんとか生き延びている状態だが、それでもあきらめられないのだ。いや、諦めるつもりすらない。

 思い続けた年数なら、敵とそう変わらない。昔ならともかく、敵の存在も明らかじゃない今なら簡単に負けてやるつもりはなかった。

 「イリス……」

 もう一年以上会っていない愛しい少女の姿が浮かぶ。

 いや、もう彼女は19歳。少女ではなく、女性が正しいのだろう。

 優しく紳士的に、そしてからめ捕るように彼女に接しよう。

 そして、今度こそ、自分が受け入れてもらうのだ。


 あの憎たらしい幼馴染じゃなくて―――




次章がんばります。

今月中に投稿再開できればいいなー。


古都

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