ニューハーフ・マラソン
ニューハーフ(和製英語:New + Half、英:Transgender)とは、男性として生を受けた者が人為的に女性として生きたり、そうした風貌をして仕事や生活をする者の呼び名であり、現代日本における造語である。朝日新聞2010年9月16日。
村興しでも島興しでも、なんでもない。
ただ単に俺の身の周りにニューハーフが三人いた、
半ば強引に走らせることにした。
お間違いなく、これはハーフマラソンではない。
俺の周りに混血の友達はいない。
距離は3km。コースは道の高低差を知り尽くした町内および商店街。
ニューハーフ、元を正せば男だが、男らしい奴は一人もいない。
「バカよ、走るなんて貧乏人がすること」
「いやよ、走る姿そのものが下品だわ」
「私、走ったら死ぬわ」
俺にとってのこの三人は、バカだし貧乏だし、下品だし、死んでも惜しくない。
「走らなきゃ、お前達のお店にはもう二度と行かない」
「別に、ちっとも困りません」
「ならば、お前達の本名を公開する。清造に末吉に留男だったな」
俺は金融業を営んでいて、こいつ等の免許証のコピーを持っていた。
「さらに今後一切、金は貸さない」
走ることになった。
それでも最初は抵抗した。
「深夜に走りたい」
「だめ」
「早朝に走りたい」
「男に戻って走りたい」
「仮面をかぶって走りたい」
全てを許さなかった。
「ニューハーフはニューハーフで走れ、それが出来ずに女ズラをするな。自分の生き方
に誇りを持てとは言わない、有るが儘を世間に見せてやれ。ビデオを撮るから親に送れ、
泣くような親なら親を泣かせてやれ。同窓会で見せてやれ。頑張って走れ、利息を半分にマケたりしない」
三人はそれぞれが意気揚々と走った。
ゴール後に誰かが言った。
「今度は『オナベマラソン』だね」
翌週、俺も走った。




