私の推しは顔がいい
突然だが言わせて欲しい。
私の推しは全員顔がいい。
そう。全員だ。
しかも様々な顔のよさがある。
カワイイ系、クール系、ハンサム系etc.....。
老若男女2次元3次元関係なく私が推す物は顔がいい。
小さい頃から顔がいい人について行って両親に叱られたこともあるくらいだ。
小さい頃は2次元にしか興味がなくアニメや漫画を読み漁りファンブックなどもお金を貯めて買った。
そのためどんなアニメや漫画の話をしても全部帰ってくるという理由で私はしばらく人気者だった。
そんな私は高校生の頃新しくできた友達に3次元のアイドルというものを教えてもらい高校生になったら北海道までライブに行ったりした。
だからお金の消費が激しく同じ頃バイトも始めた。
本当は本屋が良かったが応募してなかったため渋々近所のコンビニで働いた。
しかし高校が家から近く同じくコンビニも近かったため同級生や同じ高校の生徒が沢山来て普通に後悔した。
そうやって普通のJK生活を満喫し、無事大学生になり就職をすることができた。
社会人になると推し活をできる時間が少なくなりストレスで十円ハゲが出来てしまった。
ということで会社の中に推しを作ることにした。
そうして部長という推しができた私はすっかり元気になった。十円ハゲもいつの間にか消えていた。
妻子大好きな部長は周りのみんなに妻子自慢している。
ニヤニヤしながら惚気ける部長……。
本当に推せる( ^ω^)
もちろん顔も良い。
社会人になると学生の頃にかかんなかったお金がかかる。
しかし推し活用の貯金を作っていた私は無敵だ。
ドヤ顔をして貯金額を見ると口座の中身が3万に減っていた。
ショックを受けていると警察から電話がきて口座が不正利用されていると言われた。
不正利用したやつ絶対に許さない。
ところで話は変わるが私は友達が少ない。
コミュ障気味な訳ではなかったが厨二病を発症していたため変な子という目で見られていた。
だから当時の私と仲良くしてくれる友達には神と崇めている。
そんな神達は私の1部の推しの話を聞くと鼻で笑われるか苦笑される。
他の推しの話をしたら「わかるー!」とか「確かにー」とか言ってくれるのに。
何故!?と不満そうな顔をしていると大体「香澄ってたまにセンスがよく分かんなくなるんだよねー」と言われる。
よくわかんないとはなんだ!?
推しは全員かっこいいしかわいいんだぞ!!!って叫びたいところをぐっと我慢し推しのえろ同人誌を置いて帰る。
そんな日常を数年おくってきた私にある日お見合いがやってきた。
正直ものすごく興味なかったがお見合いを持ってきた相手が弟のお嫁さんの両親だったため渋々行くことにした。
弟には焼肉を奢らせた。
お見合いに行くとそこには男性と小さな子供がいた。
お見合い相手はバツイチ子持ちだったらしい。
話を全然聞いてなかったから知らなかった。
男性は普通の方だった。
歳は私と同じで29歳。
職業はエンジニア。
エンジニア=天才というイメージを持っていた私は心の中で彼の靴を舐めていた。
そんなことを思いながらふと彼の子供を見ると少しモジモジしていた。
机の上を見ると彼女のコップの中のお茶が空になっていたのでトイレに行きたいんだろうなーと思った。
ちょうど私もトイレに行きたかったから男性にトイレの場所を聞いた。
少し気恥ずかしかったが背に腹はかえられない。
私が席を立つとちょうど娘ちゃんも私についてきた。
そして私に「あ、ありがとうございます!」とお礼を言ってきた。
別に私も行きたかっただけだからお礼を言う必要なんてないのに律儀で優しい子だと思った。
よく見ると目がくりくりで可愛い顔立ちをしている。
少し痩せ気味な気がしたが小さい子の平均体重なんて知らなかったから多分このくらいが普通なんだろう。
その後彼女が終わるまで付き添いお見合い相手のところに戻った。
男性はありがとうございますとすみませんを多用していた。
男性も優しい人なんだなと感じた。
そのままお見合いは普通に終わった。
まぁ無理だろうなぁと思っていたが男性から「次らいつ会えますか」というメールが届いた。
そこから会う日が増えいつの間にか結婚していた。
結婚式によんだ友人からはもちろんものすごく祝われたがもっと地味な人を選ぶのかと思ったとも言われた。
そこから私は推しが増えた。
夫と娘だ。
夫に推し専用貯金からオシャレな時計を買ったら何故か泣いて喜んでくれた。
同じく娘にも推し専用貯金からミシンと裁縫セットを買ったらものすごく喜んでくれた。
2人ともいい反応をしてくれてこっちまで見てて嬉しかった。
そんな感じで貢ぐ対象が増えたことでまた貯金が足りなくなってしまった。
だから新しい資格を取り給料を増やすことにした。
新しい推しも生まれてこんな幸せでいいのか……?と思ってしまった。
そんな私たちの大事な推し達。
これからも貢いでいくと決めた。
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夏の暑い日。
お母さんの三回忌のため実家に家族が集まった。
みんな久しぶりに会えた親戚とニコニコしながら話している。
そんな様子を見ながらふと仏壇を見る。
お母さんがニコニコしながら遺影の中にいた。
私のお母さんは私が5歳の時にお父さんが再婚した女性だった。
最初に出会ったのは4歳の頃お父さんのお見合いに行かされた時だった。
それまで私は実の母親に虐待されていた。
たまたま出張から帰ってきた父に発見されこの環境から抜け出せたが私はそこから女性が怖かった。
しかしお父さんのお見合い相手はどこか少し抜けていた。
当時の私は暇すぎてお茶を飲みすぎ、途中トイレに行きたくなってしまった。
しかしお父さんの邪魔をする訳にはと悩んでいた時ちょうどお見合い相手の女性と目が合った。
そしてお見合い相手の女性はトイレの場所を聞いてくれた。
自分が行きたかったからとあの時の話を聞いたら言うけど私はそれでもものすごく救われた。
あれからしばらくお父さんは休日に私をおばあちゃんの家に預けてどこかに出かけて行った。
だけどたまに私も連れてあの時のお見合い相手の女性と一緒に遊園地に出かけて遊びに行った。
私はこの人がお母さんになって欲しいという思いがどんどん強くなっていった。
そしてその望みは叶い彼女は私のお母さんになった。
お母さんは私たちにものすごく物を買ってくれた。
私が欲しかった裁縫セットやミシンも買ってくれた。
お金に関して心配して聞いたこともあったけどお母さんは推し専用貯金だから大丈夫とか言ってお金を出すことに躊躇しなかった。
そんな私に弟が生まれた。
もしお母さんが変わっちゃったらどうしようと少し怯えちゃったけどお母さんの態度は全く変わんなかった。
いつもニコニコしながら推しについて語るお母さんは見てて面白かった。
比較的顔が良い人達を推してるのにたまに顔…いいか?って感じの人を推しててよく分かんなくなった。
そんなお母さんはライブの遠征帰りに亡くなった。
お父さんを庇ったらしい。
亡くなる前少し意識が残ってたお母さんは「よかっ…た。推し……生きてた」と言って亡くなったらしい。
最後までお母さんらしいなと感じた。
葬式にはたくさんの人が来た。
お母さんは友達少ないと自称してたけどお母さんはみんなからものすごく愛されてた。
たまにこうして親戚で集まると毎回お母さんの黒歴史大会が開かれる。
お母さんが恥ずかしがって出てこないかなというお父さんの悪ふざけ。
私も会えるならまた会いたいからいつもその黒歴史大会に混ざっている。




