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16 桑園さんと返本

アルバイト2日目。

タイムカードを切り、仕事用のエプロンを着用してから倉庫スペースに向かう。

入社からしばらくは先輩とぺアになりお仕事を教えてもらうことになっていて、今日は桑園さんとのペアだ。


「改めてよろしくねぇ。この前自己紹介したけど改めて、私は桑園法子(くわぞののりこ)。こんなおばさんと一緒じゃつまんないかもしれないけどごめんねぇ。」

「そんなことないです…!豊平有希です!こちらこそよろしくお願いします!」

「有希ちゃんね。ふふ、可愛くって元気、若いっていいわねぇ。それじゃあ返本について教えていくわね。1回じゃ全部覚えきれないから気楽にやってねぇ。」

「ありがとうございます…!しっかりメモります!!」


この前初めての挨拶をした時にも思ったけど、桑園さんって本当にお母さんみたい。

最初のお仕事が桑園さんと一緒でよかったぁ。


「まず、返本って言うのは一度仕入れた本を販売元に返品することなんだけれどね。本の種類によっ処理が違うのよぉ。全部一緒なら楽ちんなのにねぇ。」

「へぇ~、本の種類…。漫画と雑誌、とかですか?」

「ふふ、当たらずとも遠からずねぇ。例えばこれと、これと、これ。全部違う種類なのよぉ。」


そう言って桑園さんは3冊の本を手に取る。

1冊目は週刊少年ヤンプ。2冊目は刃の炎治郎の16巻。3冊目は人気J-POPアイドルグループの写真集だ。


「返本でまず覚えるのは3つよ。雑誌、書籍、買い切り書籍、の3つ。ここにあるもので言うとヤンプ本誌は雑誌。刃の炎治郎16巻が書籍。写真集が買い切り書籍ねぇ。」


ふむふむ。なるほど。


「大きいサイズのファッション誌とかヤンプ、マンデーみたいなのが雑誌で、漫画喫茶とかで全巻そろってるような単行本のコミックが書籍、それ以外が買い切り書籍…ってことですか?」

「ふふ、そうよねぇ。私もその方がわかりやすくていいと思うわぁ。

でも実は大きさとか本の形状は関係ないのよぉ。」

「本の裏面を見てみて?ほら、ここに「雑誌」って書いてあるでしょう?」


ほんとだ。

ヤンプ本誌の裏表紙の隅っこ、バーコードの近くに「雑誌」と書いてある。


「バーコードの近くに雑誌と書いてあったら雑誌で、書いてなければ書籍なの。だから例えば…これ。」


そういって桑園さんは「春のお弁当 ~めんつゆ活用術part2~」と書かれた本を手にする。


「これって毎月刊行されているお料理の本なのよぉ。たぶん、有希ちゃんから見たらこれって「雑誌」じゃない?」


おいしそうな煮物の写真とともに

~旬の野菜を美味しく食べる~

~すぐ使えるめんつゆ時短レシピ~

なんて小見出しが書かれたカラー印刷の本だ。


「はい、雑誌…ですよね」

「でしょう?でもねぇ、この本の裏を見てみて?雑誌って書いてある?」

「…あ!書いてないです」


ヤンプにはあった、バーコード近くの雑誌の二文字が、ない。


「そうなの。だからこれは種類としては「書籍」になるのよぉ。」

「はぇ~、そうなんですね…。私、なんとなく大きいサイズでカラー印刷されている本のことを「雑誌」って呼んでるイメージでした」

「ふふ、そうよねぇ。私もイメージは有希ちゃんと同じよぉ。ただ本の返品をするときは種類別に発送先が違うから区別しないといけないのぉ。」


なるほど…。雑誌と書籍はバーコード付近を見よ、ということか。

あれ、となると買い切り書籍もどこかに書いてあるのかな。


「桑園さん、すみません、そうすると買い切り書籍にも何か目印があるんでしょうか?」

「それがねぇ。買い切り書籍には本自体には特に目印がないの。そして読んで字のごとく買い切り書籍は買い切りなので返品ができないよのぉ。雑誌、書籍を分けて返品作業をしつつ買い切り書籍があったら売場に戻さないといけないのぉ。」


買い切り書籍は売り場に戻す…と。

メモ帳に注意点を記載しておく。


「そうするとどれが買い切り書籍かは頑張って覚えないとってことですね…!私…頑張ります!!」

「頑張り屋さんねぇ。でもたぶんここの売場の中だけでも数百種類の買い切り書籍があるはずよぉ。全部覚えられるかしらねぇ?」


き、記憶力は中の下…いや中の上ぐらいあるはず。


「す、数百ですか!?がんばり…ます!!」


たしか…中学1年生の教科書に出てくる英単語が約500語。

そう考えたら頑張れば…覚えられ…る…はず。たぶん。


「ふふ、ごめんねぇ有希ちゃん。冗談よ。いくらなんでも全部記憶して見分けるなんて無理よぉ。ここみて。ほら。」


そういって桑園さんは本の裏の端っこに小さな丸い青シールが貼ってあるのを指す。


「この青いシールが貼ってある本は買い切り書籍なの。だからこれが貼ってあったら売場に戻してくれれば大丈夫よぉ。」

「なるほど!あたし全部覚えきれる自信がないのでよかったです…!あれ?でも桑園さんこの本が買い切り書籍だっていうの裏面見てないのにわかってましたよね?」

「さすがに毎日見てると覚えちゃうのよねぇ。あと、買い切りになるものはいくつか特徴があるから、追々覚えていくといいわよぉ。」

「わ、わかりました!」


桑園さんってすごい人なんじゃないだろうか…?


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