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 テオと別れたあと、なんとか家族にバレないようにこっそり部屋へと戻り、布団に入った。一応眠れたものの、寝不足なのは否めない。


 人見知りにはレベルが高かったせいか、緊張しっぱなしだったせいか、疲れが抜けていない気もする。


 だが、今日早く寝るわけにはいかない。妹のフレアが、ダニアスの話が社交界にどう出回っているのか聞いてきてくれるからだ。わたしはダニアスのことがあったので、今回のパーティーは体調不良で休ませてもらっている。いま、社交界はダニアスの話でもちきりだ。きっとわたしも巻き込まれていることだろう。注目の的になる勇気を、わたしは持てなかった。かといって、休んでも、皆の想像力をかき立てるだけなんだけどね…。


「フレア、お帰りなさい!どうだった?」


「ダニアス様は、病気の療養ということで、田舎に引きこもったことになっているみたいです。でも、ダニアス様が逮捕されたと話している方もいらっしゃいました」


 ただでさえ、ダニアスが表舞台から消えたことで騒ぎになっているのに、こんな話が出回れば、ダニアスはもう戻ってはこられないだろう。真実が偽の理由を上回るのも、時間の問題だ。社交界はゴシップが大好きだし、わたしが出ていけば、質問攻めに合うことは間違いない。


「やっぱり…」


「大事なのはここからです!お姉様!」


 フレアが珍しく声を荒げて、わたしの肩を掴んだ。あまりの勢いに一歩下がるが、フレアもわたしに合わせて距離を詰めてくる。


「ナイダ国での結婚パーティー、覚えていらっしゃいますね?」


「………あぁ、そんなことあったわね」


 いろいろありすぎて、すっかり忘れていた。同時に、クレイのことも思い出す。しばらく会えていないけど、元気にしているだろうか。


「そこで、ジャック殿下と話していたお姉様が、婚約者候補として噂になってるんです!」


「………はい?なんで??」


 たしかにジャックとは話をしたけど、本当にそれだけだ。そもそも、ジャックに婚約者がいるかどうかなんて、微塵も興味がなかった。


「あの方、女性とほとんどお話なさらないって有名なんですって」


 だからといって、いくらなんでも短絡すぎるのではないだろうか。


「王族同士とか、同盟を結ぶためならまだ分かるけど、さすがにわたしは…」


「ダニアス様のことが、ジャック殿下の噂に真実味を持たせているんです」


 わたしは文字通り頭を抱えた。いろいろと言いたいことはあるけど…。フレアに当たっても仕方ない。彼女は、わたしの頼みを聞いてくれただけだ。


「ありがとう。助かったわ。わたしとダニアスのこと、根掘り葉掘り聞かれて大変だったでしょ?」


「いいえ!勝手に相手が、こんな噂を聞いたんですけど、って言ってくるのを、知りません!って笑顔で蹴散らしてきましたわ」


 本当に、気にしていないといった様子で答えるフレアを、わたしは優しく抱きしめた。


「…ありがとう」


「もうお姉様には、あんな思いをしてほしくありませんもの」


 きっと、グレンのことだろう。あの時は、何も考えずにパーティーに出席したが、さまざまな人に絡まれて、心ないことを言われ、精神的に参ってしまった。わたしは、フレアを抱きしめていた腕から力を抜く。


「さぁ、お菓子を準備してあるから、一緒に食べましょう」


「やった!ありがとう、お姉様!」


 フレアが弾けるような笑顔を見せる。それを微笑ましく思いながら紅茶の準備をしようとすると、部屋がノックされた。


「お手紙がきております」


 使用人から渡された手紙の差出人を見て、わたしは目を見開いた。


「嘘でしょ…、いま?」


 噂の渦中の人物、ジャックからだった。


お読みいただき、ありがとうございます!

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