表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/28

結婚パーティー 2

前半クレイside、後半メイベルsideです。

こんなに長くなる予定ではなかったのですが、もうちょっと続きます。

 クレイside


 メイベルたちが出て行ったあとも、結婚パーティーは滞りなく進んでいく。ただの痴話喧嘩だと思われたのだろう。もちろん、このような場で痴話喧嘩などしてはならないが、実際よくあることなので、皆目を瞑るというのが暗黙のルールだった。


 ジャックが、そばにいた老夫婦に声をかける。


「失礼。今出て行った彼らのことは知っているか?」


「あまり知りませんなぁ」


「あら、以前あなたにお話したじゃないの。覚えてないの?」


 その夫人によると、彼らの母国では、ダニアスが熱烈にアプローチしているのに、メイベルが渋っているると有名らしい。だが、ダニアスの話では、仲睦まじく過ごしているとのことだった。メイベルと2人でいるときの態度のちぐはぐさは気になるものの、それも若さゆえだろうと思いながら見守っているらしい。メイベルの両親は結婚してほしいそうで、あとは時間の問題だろうということだった。


「そうか、ありがとう」


「いえいえ」


 俺はその話を聞いて呆然としていた。やはり、彼女には婚約者のようなものがいたのだ。メイベルが幸せになれるなら、祝福しなければと思っていた。けれど、いざその場面を見るとなると、まったく決意なんてできていなかったことが分かった。どす黒い何かが溢れてきそうで、耐えきれなくて、苦しい。


 身を引くことが、メイベルのためなのかもしれないと思うと、動けなかった。でも、出て行く前に見た彼女の表情は、嫌悪に近いもので。直感を信じるか、理性を信じるか、迷っていた。


「聞いたか?今の話」


 ジャックの声で、意識が引き戻された。彼は、鋭くこちらを睨んでいる。


「どう動くかは、お前が決めたらいい」




 彼女は笑っていなかった。あの太陽のような明るい笑顔が好きだったのに。



 走り出す理由は、それだけでよかった。



 * * * * *



 メイベルside


 ある程度歩いたところで、手を離す。


「どうしていつもあんなことばかり言うんですか?」


「あいつはやめていたほうがいい」


「…………あいつ?」



 ダニアスが話し出したのは、クレイについてだった。12歳のときに、孤児院にいたのを、跡継ぎがいなくて困っていたエルダー家に引き取られたらしい。そして、やたらとダニアスが強調したのは、エルダー家が"子爵"であることだった。クレイが何も言わないのをいいことに、ダニアスは言いたい放題だ。


「子爵、ましてや養子など、侯爵家とは釣り合わないことくらい分かるだろう?」


 だから、関わるなと、ダニアスは言いたいらしい。わたしの気持ちが置いてけぼりなことにも腹が立つが、1番はそこじゃない。


「それ以上、しゃべらないでもらえますか?」


 もう耐えられないと思ったとき、わたしは自然と話し出していた。


「立場なんて関係ありません。わたしの交友関係に口出ししないでください」


「どうしてそんな男が…」


「彼のこと悪く言うのは、わたしが許しません」


 わたしは、そのまま無言で歩き出す。ダニアスが腕を掴んだ方が、勢いよく振り払い、誰もいない廊下を進んでいった。





 ―――が、案の定、迷子である。


 ダニアスの元からかっこよく去るまでは良かった。彼がついてこないところも完璧である。しかし、カツカツと自分の足音が響くだけの廊下は、少し恐怖を感じるのもまた事実。潜入したあの日を思い出してしまうから。気持ちを落ち着かせるように、耳元で揺れるイヤリングに手を伸ばす。


 そのとき、誰かの走る足音が聞こえてきた。こちらへ向かってきているような気がする。あの時の恐怖がよみがえって、今さら手が震え出す。そこから救い出してくれたのは……


「メイベル!」


 わたしの名前を呼ぶ声が、静かな廊下に響き渡った。




お読みいただき、ありがとうございました!

もしよろしければ、評価・ブックマークなどをしていただけると嬉しいです(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ