結婚パーティー 2
前半クレイside、後半メイベルsideです。
こんなに長くなる予定ではなかったのですが、もうちょっと続きます。
クレイside
メイベルたちが出て行ったあとも、結婚パーティーは滞りなく進んでいく。ただの痴話喧嘩だと思われたのだろう。もちろん、このような場で痴話喧嘩などしてはならないが、実際よくあることなので、皆目を瞑るというのが暗黙のルールだった。
ジャックが、そばにいた老夫婦に声をかける。
「失礼。今出て行った彼らのことは知っているか?」
「あまり知りませんなぁ」
「あら、以前あなたにお話したじゃないの。覚えてないの?」
その夫人によると、彼らの母国では、ダニアスが熱烈にアプローチしているのに、メイベルが渋っているると有名らしい。だが、ダニアスの話では、仲睦まじく過ごしているとのことだった。メイベルと2人でいるときの態度のちぐはぐさは気になるものの、それも若さゆえだろうと思いながら見守っているらしい。メイベルの両親は結婚してほしいそうで、あとは時間の問題だろうということだった。
「そうか、ありがとう」
「いえいえ」
俺はその話を聞いて呆然としていた。やはり、彼女には婚約者のようなものがいたのだ。メイベルが幸せになれるなら、祝福しなければと思っていた。けれど、いざその場面を見るとなると、まったく決意なんてできていなかったことが分かった。どす黒い何かが溢れてきそうで、耐えきれなくて、苦しい。
身を引くことが、メイベルのためなのかもしれないと思うと、動けなかった。でも、出て行く前に見た彼女の表情は、嫌悪に近いもので。直感を信じるか、理性を信じるか、迷っていた。
「聞いたか?今の話」
ジャックの声で、意識が引き戻された。彼は、鋭くこちらを睨んでいる。
「どう動くかは、お前が決めたらいい」
彼女は笑っていなかった。あの太陽のような明るい笑顔が好きだったのに。
走り出す理由は、それだけでよかった。
* * * * *
メイベルside
ある程度歩いたところで、手を離す。
「どうしていつもあんなことばかり言うんですか?」
「あいつはやめていたほうがいい」
「…………あいつ?」
ダニアスが話し出したのは、クレイについてだった。12歳のときに、孤児院にいたのを、跡継ぎがいなくて困っていたエルダー家に引き取られたらしい。そして、やたらとダニアスが強調したのは、エルダー家が"子爵"であることだった。クレイが何も言わないのをいいことに、ダニアスは言いたい放題だ。
「子爵、ましてや養子など、侯爵家とは釣り合わないことくらい分かるだろう?」
だから、関わるなと、ダニアスは言いたいらしい。わたしの気持ちが置いてけぼりなことにも腹が立つが、1番はそこじゃない。
「それ以上、しゃべらないでもらえますか?」
もう耐えられないと思ったとき、わたしは自然と話し出していた。
「立場なんて関係ありません。わたしの交友関係に口出ししないでください」
「どうしてそんな男が…」
「彼のこと悪く言うのは、わたしが許しません」
わたしは、そのまま無言で歩き出す。ダニアスが腕を掴んだ方が、勢いよく振り払い、誰もいない廊下を進んでいった。
―――が、案の定、迷子である。
ダニアスの元からかっこよく去るまでは良かった。彼がついてこないところも完璧である。しかし、カツカツと自分の足音が響くだけの廊下は、少し恐怖を感じるのもまた事実。潜入したあの日を思い出してしまうから。気持ちを落ち着かせるように、耳元で揺れるイヤリングに手を伸ばす。
そのとき、誰かの走る足音が聞こえてきた。こちらへ向かってきているような気がする。あの時の恐怖がよみがえって、今さら手が震え出す。そこから救い出してくれたのは……
「メイベル!」
わたしの名前を呼ぶ声が、静かな廊下に響き渡った。
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