距離
前半がクレイside、後半がメイベルsideです。
短めですが、ご容赦ください。
クレイside
「いつもなら、街中で会うのに、王城近くで待ち合わせなんて、どうしたのかな〜?」
「関係ないだろ」
「はいはい」
メイベルに会わないようにした、などとは言えないため、いつものように金を出し、情報を買う。背中合わせでやりとりしている青年、テオは、情報屋だ。正当な金さえ払えば、さまざまな情報を売ってくれる。売られることも、覚悟しなければならないが。
「そういえば、この間の取引の分は、ちゃんと捕まえたらしいね〜」
「…お前もあそこにいたはずだ」
テオは中性顔で、男女問わず変装でき、どこにでも潜り込んで、情報をかっさらってくる。例のパーティーにも来ていた。テオの白々しい言葉を適当に聞き流していると、珍しくこちらを覗き込んできたので、驚いて一歩下がった。
「まぁ、そうなんだけどさ〜」
「………………なんだ?ニヤニヤして」
「聞きたい〜?」
なんだか嫌な予感がする。早々に引くほうが無難だろうと、テオの横をすり抜け歩いていく。
「いや、いい」
「なんで〜?いいもの見つけたのに〜」
そのまま離れようとしたが、あまりにもテオが思わせぶりなことを言うので、足を止めた。
「どうせ金取るんだろ?」
「それは君次第かな〜。かわいい子だね、メイベルちゃん」
思わず振り返ると、こちらを見ていたテオが爆笑していた。
「ハハハッ!あの子がいなくなってすぐ、僕との話を断ち切って探し始めたでしょ〜?バレバレだよ」
パーティー会場で、変装したテオと話しているときは、メイベルがテオに目をつけられないよう遠ざけていた。なのに…
「僕に近づけたくなかったんだろうけど、逆効果だったみたいだね〜。すぐ分かっちゃった」
こいつに、メイベルのことを知られたのはまずい。俺の周囲にいる人間として、危険に巻き込まれる率が高くなる。
「……彼女のことは、絶対に口外するな。もちろん対価がいるなら払う」
「君の反応がよかったから、見逃してあげるよ〜。彼女のことは、情報としては扱わないことにする」
情報屋が、無報酬でそんなことをするなんて、どういう魂胆なのかがわからない。むしろ、大金を要求してくるほうが安心するくらいだ。
「何を考えている?」
「君はお得意様だからね〜。ちょっとしたおまけだ」
テオはそう言うと、またもや思い出したように、ゲラゲラと笑い出した。
「いや〜、面白いものが見られたよ〜。そんなに大事な子なんだ〜」
「……そんなんじゃない」
* * * * *
「戻ったか、クレイ」
「えぇ」
「早かったな。街にも行っていないようだし」
ジャックには、抱えている気持ちを、なにかと見透かされているような気がして、少し居心地が悪い。
「……最近、なんか変だぞ、クレイ」
「気のせいですよ。少し疲れがたまっているのかもしれません」
「あの娘か?」
「…まさか」
「お前はもう少し、素直になったほうがいい」
「なんのことやら」
そう言ってはぐらかすと、ジャックは諦めたように小さくため息をつくのだった。
* * * * *
メイベルside
潜入捜査から帰ったあの日、目が覚めたら、クレイの顔があって、いろいろとパニックになって、からかわれたのだと笑って誤魔化して、気づいた時には馬車をおりていた。見送ってくれたクレイが、すごく悲しそうな笑顔を浮かべていた…、ように思う。
様子が変だと思ったが、聞くことはできなかった。わたしには、踏み込む余地なんてないように思ってしまったのだ。
あの日から、クレイには会っていない。喫茶店にも行ってみたが、彼に会うことはなかった。もう一度だけでも会えたらと、グレンを探しながらクレイも探すという、なんとも奇妙なことになってしまっている。
わたしは、クレイのことをなにも知らないということを、思い知らされた。国に仕えているといっても、いろいろあるし…。
そういえば、ジャックとルイスの名前も、きちんと聞いていなかった。クレイよりは少し年上のような気がしたけど。あの人たちは結局何者なんだろうかと考えても、答えなんて出るはずがない。
結局、クレイもグレンも見つからないまま、ナイダ国滞在の、最大の目的であった結婚式を迎えることになる。
お読みいただき、ありがとうございました!
もしよろしければ、評価・ブックマークなどをしていただけると嬉しいです(*^^*)




