91、
なぜか妹が大きなその目を僕に向けた。なぜだか背中が熱かったけれど気にしない。僕はそのままカウンターを抜けてちょうどのタイミングで開くエレベーターに乗り込んだ。妹が後に続く。僕と妹はそのまま背中を向けている。ドアは勝手に閉まり、エレベーターは降りていく。
おニイちゃん・・・・ 気がついていないの?
妹がそう言う。なんのことなのか? まるで思い浮かばない。口から血でも流れているのかと、エレベーターの中でドアに向かって口を開ける。ピカピカのそのドアは、鏡ほどではないけれど姿を映し出してくれる。
そうじゃなくって! 今の人、気がついたかも知れないよ。
だからなにをなの?
本当に無意識なんだね。おニイちゃんさっき、ゾンビ語で返事してたわよ。
・・・・そうか。
気をつけているつもりでも、たまに無意識にゾンビ語を話してしまう。けれど問題はない。髭面の男の人からは嫌な感じを受けない。ゾンビだとバレても、嫌われたりはしないだろう。
おじさんのバンドメンバーにはどうやって会えばいいのだろう? ここにはドラムのあの人しかいない。とういうよりどうしてあの人はここにいたんだろう? 想像はできるけれど、そんなことに意味はない。どうでもいいことだ。
三人のうちの一人がおじさんのこの事件に関わっていることは確かだけれど、素直に教えてくれるとは思わない。
僕が必死に思考を巡らせていると、エレベーターが一階に到着してドアが開いた。
そういえばだけどおばあちゃんはどこに行ったのかな? 緑の車のこと聞かなかったけれど、よかったのかな?
妹がそう言う。
あの人はなにも知らないよ。それは絶対だ。嘘はつけないんだよ。気がつかなかった? あの人も、ゾンビだよ。
匂いを嗅げば大体のことは見通せる。
あぁ・・・・ 妹のため息は、納得を表現している。
外に出てからは、当ても分からず歩き続ける。立ち止まるのは危険だ。あらゆる意味において。




