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おじさんの曲は、生活感の感じられない方の家の中から聞こえてくる。僕と妹は、目を合わせる。どうするつもりかは二人とも同じ気持ちだ。けれど、そうする勇気が足りない。きっとだけれど、ドアに鍵は掛かっていない。それは予感なんかではなく、確信だった。
おニイちゃんが開けるんだよね?
僕を見つめながら妹はそう言う。
もちろんだよ。と僕は声を震わせる。
ドアに手をかける。とても冷たい。さっきの玄関ドアとはまるで違う感触。僕は目を瞑り、エイッとドアノブを回した。
ゆっくりだけど、ドアノブは回る。後は引けばいいだけだけれど、手に力が入らない。
僕の様子を見ていた妹が、僕の手に自分に手を重ねる。暗黙のまま、二人で息を合わせてドアを引こうとする。
バタッと手が押される。結構な勢いがあり、身体ごと後退る形になった。妹と共に。
突然の出来事に僕は咄嗟の反応を示す。妹だけは守ろうとの意識が働き、しっかりと抱え込んだ。




