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ベイビーゾンビ  作者: 林広正
68/131

68、


 おじさんの番号は登録されている。電話帳を開いて、おじさんの顔を押せば電話がかかる。

 呼び出し音が繰り返されるばかりで、反応がない。留守番電話に変わることもない。

 出ないみたいだね。おじさんはどこかに連れて行かれたんだ・・・・ もっと早く来ればよかった。

 うぅん、そんなことないよ。

 妹はそう言いながら、辺りをキョロキョロ見廻し出した。

 なにか聞こえてるよ。これ・・・・ おじさんの歌じゃないかな?

 静かに耳を済ませると、確かに音が聞こえてくる。聞き覚えのあるメロディー。声は聞こえてこないけれど、楽器の音はいくつも重なっている。これって・・・・

 おじさんは携帯電話の着信音に自分の楽曲を使用している。しかも丁寧に、それ専用に新しく録音し直している。

 他では聞くことのできないおじさんの有名曲の別バージョン。

 それが聞こえてくるってことは、その理由は一つしかない。おじさんがそこにいるかどうかは別として、そこには確かにおじさんの携帯電話があるってことだ。

 僕と妹は、音がどこから聞こえてくるのかを耳で探る。ゆっくりと足を進めていくと、いつの間にかもう一つの家の玄関前に辿り着いていた。

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