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ベイビーゾンビ  作者: 林広正
63/131

63、


 駅を降りてからの道は、覚えてきた通りだった。地図で確認していた道はイメージ通りだった。けれど、その風景まではイメージができていなかった。そのせいで道に迷ったわけではない。初めての街並みに、僕は涙を流した。

 涙の理由ははっきりとはしないけれど、想像はつく。父親の実家はここから近い。きっと父親は、ここをよく歩いていたはず。母親も一緒に歩いたことがあるかも知れない。いろいろな想像が頭を巡る。朝早いこの時間にはまだ閉まっているお店が多い。八百屋のおじさんがもしかしたら父親の友達かも知れない。花屋のおばさんが初恋の相手だったかも知れない。そんな想像をしながら歩いているのは楽しくて、ついつい道を間違えそうになる。そんなときは妹が僕の手をほんの少し強く握って間違いを教えてくれる。

 おじさんの家は、分かってはいたけれど大きな家だった。立派な門構え。外からは中が殆ど覗けない。立派な門がある場所以外は、背の高い塀で囲まれている。その内側には巨木が立ち並んでいる。

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