56、
大丈夫だよ。お金なら持ってるよ。
妹がそう言った。僕はビックリする。妹は、僕の予想を超えている。
おニイちゃんの様子がおかしいのはずっと気がついていたよ。いつか今日みたいな日が来るって分かっていたよ。だから、ちゃんと準備をしてあるの。三日前からカバンにはお財布が入っているし、朝も一番に目を覚まして待っていたんだから。
僕は妹がカバンから取り出した財布を受け取った。中にはコインが一杯だった。お札も一枚入っていた。
お財布を買ってくれたのは父親だった。子供っぽい柄だけど、好きなオモチャを買うようにと、生まれてすぐに買ってくれた。中にはお金を入れてくれたのも父親だ。なにかあったときに困らないようにとお札を一枚常に入れてある。コインはガチャガチャように定期的に足してくれる。家の中でいいことをするとくれることもある。僕はすぐに使ってしまうけれど、妹はあまり使わずにいる。お財布の中にはコインが溢れんばかりに一杯だった。
妹の財布から取り出したコインで二枚の切符を買った。妹のお金を盗むつもりはない。コインが一杯で重いから使っているだけだ。後できっちり返すつもりでいる。
切符をを買うときも、改札で機械に切符を飲み込ませる時も、妹はいちいち目を輝かせて反応をする。わぁー! すっごーい! 恥ずかしさを知らない妹が羨ましい。僕だって初めて一人で切符を買って改札を抜けている。感動で一杯なのが本音だったりする。




