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ベイビーゾンビ  作者: 林広正
5/131

5、


 僕はまだ、この脳味噌が機能している。母親だってそうだ。脳味噌が機能しているからこそ、父親を襲わないんだ。

 父親は、僕を愛してくれる。母親のこともまだ愛しているようで、母親もその感情に応えている。その結果、僕には妹ができた。

 ゾンビが赤ん坊を産むのは珍しい。僕の知る限りは、妹以外には存在しない。けれど世界には多くのゾンビが散らばっている。他にもきっと、こんな事例があるはずだとは思っている。

 生まれながらにしてゾンビである点では、僕と妹は共通している。けれど僕は生まれながらにして微生物を保持しているとういか、僕の体内でその微生物が生まれたんだ。どんな経緯で生まれたのかはまだ解明されていない。世界中の研究者が格闘しているらしいけれど、未だに僕がオリジナルであることの証明すらできないでいる。

 僕にはほんの少し、その記憶がある。母親の胎内で、僕はゾンビになった。心当たりがあるあの日をきっかけに、僕の身体が変異した。僕の身体に住み着くもう一人の僕が、変化した。

 僕は元々、一卵性の双生児だった。医者はもちろんのこと、お母さんだってその事実を知らない。誰も気がつかない間に分裂をし、誰も気がつかない間に飲み込んだ。

 そいつはきっと、僕に取り込まれることで生き返り、ゾンビ化したと思われる。母親と父親は、本気で双子を願っていた。可愛い男女の双子を望んでいたようだけれど、僕が芽生えた時点でその可能性は消滅した。母親の胎内には一つしか卵がなかったからだ。僕と同じ二つ目の細胞が同時に芽生えた様子もなかった。となると残る方法は一つだけだ。

 細胞分裂。母親の胎内で、芽生えたばかりなら可能だと僕は信じた。そして願い、意識を集中させた。僕の細胞が、分裂していく。その感覚は、とても奇妙だった。自分が二つになるというよりも、自分の中に初めから存在していたもう一つの意識が離れていくように感じられたのを覚えている。

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