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父親が妹を取り出した。臍の緒を切ったり、ぬるま湯で身体を拭いたり、背中を摩ったり、父親はお医者さんのようにも見えた。
妹が元気よく泣くその姿は、可愛いというより、格好良かった。物凄く力強く、生きているんだなって実感を与えてくれた。
元気な子じゃないか。しかも美人だ。義姉さんにそっくりだよ。
おじさんの声が聞こえた。いつの間にか背後に立っていた。
なんとか無事に生まれたよ。これで終わりじゃないけれど、助かったよ。お前がいなければどうなっていたことか。
父親のそんな言葉を受けて、おじさんが笑った。
なにを言ってるんだかな。俺がいなくても、兄貴なら自分でなんとかしただろ? 人数は多くても、相手はゾンビだ。人間の相手よりも得意だろ?
それはそうだけどな、この子を無事に取り上げるには時間が必要だったんだ。本当に助かったよ。
父親はそう言いながらタオルで包んだ妹をおじさんに手渡した。
こんなにも可愛いんだな、赤ん坊って・・・・
泣きそうなおじさんの顔を初めて見た。
ゾンビだとか人間とか、そんな区別がなくなればいいのにな。
おじさんの呟きに、父親は無反応だった。
けれど僕はきちんと反応した。大丈夫だよ。いつかきっと共存できる日が来るから。僕たち家族がその証拠だよ。
ゾンビ語で言った僕の言葉は、おじさんに届いていたのだろうか? 父親はそうだねと微笑んだけれど、おじさんは無言で僕を見つめただけだった。笑顔のようにも泣き顔をのようにも見える独特な表情で。
その日はおじさんも家に泊まり、五人で一晩を過ごす最初の日になった。




