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ベイビーゾンビ  作者: 林広正
24/131

24、


 ゾンビ同士が赤ん坊を産むことは珍しくないけれど、ゾンビと人間の場合は話が変わってくる。普通は、その行為の最中に人間もゾンビ化してしまう。僕の母親のように甘噛みで済ませることは珍しい。

 興奮を抑えるのは難しい。しかも子作りの最中にそれができるってことは奇跡そのものだ。普通は本能がその抑制を拒む。

 母親には愛がある。その愛は僕だけのものじゃない。父親に対しては、母親が僕以上に愛していると感じることもあるほどだ。

 妹が生まれたときのことは、忘れられない。

 あの日の父親は、まさにゾンビ以上に恐ろしい存在だった。

 ゾンビの臭覚は、物凄い。自分よりも弱いモノを見つけることに長けている。赤ちゃんゾンビには特有の匂いがある。母乳に似ていると僕は感じている。そしてその匂いは、とても心地がいい。大好きな故郷のような匂いなんだ。まさに、母親と赤ん坊は故郷で繋がっている。

 妹が産まれるほんの数時間前から僕の家にはゾンビが集まってきた。ゾンビの匂いは、僕でも分かる。あれは独特でもなんでもない。血と汗と腐敗の匂い。要するに臭いんだ。

 僕の家は普段、なにか得体の知れない力に守られている。それが何なのかは分からないけれど、何故なのかは分かる。

 僕が全てのゾンビの始まりで、母親がその僕をこの世界に生み出したからだ。それ以外の理由は必要がない。

 得体の知れない力でさえ、ゾンビの本能には勝てない。邪魔者を排除することに、意識は必要としていない。それに勝る本能が働いた時にだけ勝つことができる。得体の知れない力への対処法は、残念なことに本能には組み込まれていないようだ。

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