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ベイビーゾンビ  作者: 林広正
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22、


 ゾンビが赤ん坊を産むのは母親が初めてってわけではない。妹が生まれてくる前にも何人かの赤ちゃんゾンビを目にしている。それはもう、耐え難い光景を目の当たりにすることを意味している。母親のお腹に赤ん坊がいると知ったときから、僕はショックのあまりしばらくまともに母親に抱きつくことができなくなった。

 赤ちゃんゾンビは、大抵が産まれてすぐに殺されてしまう。ゾンビが赤ん坊を産むには、普通の病院では不可能だからだ。今の世の中では、ゾンビを受け入れてくれる病院は存在しない。僕の妹も、家で産まれた。

 ゾンビの母親にも愛情はある。けれど問題は、それ以外のゾンビにある。自分の子に対しての愛情はあっても、他人に対する愛情は物凄く希薄だ。ゾンビは基本的には連まない。中毒患者系は特にその傾向が強い。理由は簡単だ。人間の血を独り占めしたい。そんな欲望を隠そうともしない。誰かに取られては困る。みんなが敵にしか見えていない。

 基本的にゾンビはゾンビを襲わない。ゾンビの血を飲んでも気分は落ち着かない。けれど、邪魔者は排除する。意識的な喧嘩はしない。そして、暴力的だ。赤ちゃんゾンビは、邪魔になる。中毒患者系ゾンビが症状を露わにしたとき、その目に映ればまず間違いなく標的にされてしまう。その小さな身体と愛くるしい表情には、ゾンビでさえも驚異を感じる。赤ちゃんゾンビは、憎らしいほどに可愛いんだ。僕も少し前までならそんな目で見られていたけれど、今ではもう、立派なお子様扱いをされて困っている。

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