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ベイビーゾンビ  作者: 林広正
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21、


 ゾンビでいることに、不満はない。もう少しまともに会話ができると申し分はない。この口と喉の動きが上手くいかない。お腹や肺も自由に動かすことができない。そもそも僕や妹は、生まれたときからゾンビ菌に身体を支配されている。父親はまともな言葉を使うけれど、母親はまともには喋らない。喋り方を教わっていない僕と妹には、人間の言葉はまだまだ難しい。

 僕はまだ三歳だし、妹は一歳になったばかりだ。人間でも喋れない子供は多い年齢だ。

 とは言っても、僕や妹は頭がいい。人間が喋る言葉は、どこの国の言葉でも聞き取れる。もちろん意味も分かる。喋れないだけで、理解はできている。初めて聞く言葉も、なんとなくの法則はすぐに分かる。後は直接声を聞いて覚えていく。文字だって読める。初めて見る文字は流石に読めないけれど、読み方が分かればそれで十分だ。誰かが読んでいる言葉を聞ければ問題がない。

 父親は僕と妹に言葉を教えてくれる。だから理解はできる。けれど、喋れないのは父親の言葉を真似できないからだ。頭の中では何度もその言葉を繰り返すことができるのに、この口が、上手に動かせない。脳と身体のバランスが違う父親の仕草や動きを真似するのは難しい。

 ゾンビでも普通に話をする人が存在する。学生ゾンビがその代表だ。僕はまだ、ちゃんと会ったことはない。遠目で眺めたことがある程度だ。テレビの人間や政治関係の喋ることを仕事にしている人はゾンビになっても話し続ける傾向にある。けれど、一般的には喋れるゾンビは稀だ。呻いたり物真似言葉を繰り返すばかりだ。

 僕の母親も、そんな一般的なゾンビだったりするけれど、不思議と意志の疎通に不便を感じたことはない。それは父親も同じようで、二人は今でもラブラブだ。

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