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ベイビーゾンビ  作者: 林広正
15/131

15、


 ゾンビ菌の感染拡大の要因は、大元を辿れば僕だけれど、看護婦の彼女にあると言っても間違いではない。

 ゾンビ菌は、その血液を通してでなければうつらない。人間の血液にはまだ、解明されていない機能が隠されているのかも知れない。ゾンビ菌をうつされると、うつした誰かの特徴を一つ受け継ぐ傾向にあるようだ。看護婦の彼女は、僕の母親から真面目さを受け継いでいる。母親は、規則や信念だけは絶対に守る人なんだ。看護婦の彼女もきっと、それを守っているからこそ、病院内での感染を阻止していた。

 この国で最初に蔓延したゾンビは、みんなが優しくて、人助けを得意としていた。特に怪我人を見過ごすことができない。

 ゾンビが街中で怪我人を手当てし、その怪我人がゾンビ化する。そんな現象が、入院中に多発していた。それがこの国でのゾンビ拡大の第一歩だった。

 海外での拡大は、看護婦の彼女の旦那が担っている。旦那がどんな人間だったのかは分からないけれど、きっと社交的だったとは思われる。しかも、笑顔が素敵なイケメンだったとも予想される。旦那が辿った足跡で現れたゾンビは、みんなが決まって女性だった。可愛いけれど、ほんの少し影のある幸薄めの女性が多い。そんなタイプの女性は、ゾンビ化すると恐ろしい。誰彼構わず襲う傾向にある。

 そんなわけで、海外ではあっという間にゾンビが増えていった。

 この国でのゾンビ化の蔓延が遅かった理由は、看護婦の彼女が外に出た第一号だったからだ。彼女はその欲求を我慢できずにはいたけれど、誰彼構わず襲うようなことはしていない。なんとなくではあるけれど、優しそうな人を狙っていた。若過ぎもせず、年寄りでもなく、幸せを長く過ごしていそうな男性に噛み付く。

 ゾンビ化しても、殺されることは多い。ゾンビ化したからといって、強くなるわけではない。痛みは感じなくなる。筋肉の動きは素早くなる。ジャンプ力も高まるし、臭覚もよくなる。とは言っても、その高まった能力を使いこなせるようになるには時間がかかる。僕のような生まれついてのゾンビは別として、普通のゾンビは使いこなす前にその能力によって身体を痛めて自滅するか、単純に恐ろしい人間に殺されてしまう。

 ゾンビの死は、血流が絶えた時だ。心臓が壊れても、血が流れている限りは死なない。脳を潰しても、生きることはできる。ただ、脳が機能していない時のゾンビはとても不幸だ。それは例え意識をしていなくても行動に表れてしまう脳の機能が停止してしまうからだ。人間のだけではなく、生き物の脳は高精度にできている。例え無意識でも、最低限の働きは勝手にしてくれる。ゾンビ菌が身体を支配していても、脳でそれを抑制していなくても、最低限の行動は可能だ。歩いたり声を出したりは問題なくできる。

 ゾンビ菌は、脳の機能がなくては生きてはいけない。そう言っても間違いではない。脳の機能を支配しない理由はそこにもあるのかも知れない。

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