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ベイビーゾンビ  作者: 林広正
12/131

12、


 両手を前に伸ばしていかにも物欲しげに向かってくるゾンビは意外と少ない。無意識の欲情。父親がそう呼んでいた。脳の機能が働かないと、ゾンビ菌が血流を利用して身体を操作する。

 父親は、その微生物をゾンビ菌と呼んでいる。

 ゾンビ菌に勝てない連中も多くいる。脳の働きが弱いのだろう。広い意味で公務員と呼ばれる人間に多く見られる。区役所の窓口で両手を伸ばしている姿をよく見かける。テレビの国会中継でもそうだし、アナウンサーにも目立っている。

 ゾンビであることがバレてしまうと、大抵は仕事をクビになり、その次の日から公には姿を消してしまう。どこかで隔離されているとの噂もあるし、殺されているとの噂もある。必死に誤魔化しているゾンビをよくテレビで見かけるけれど、うまく誤魔化し切れているゾンビは少ない。

 目の下に隈ができるのは、基本的にゾンビは睡眠を取らないからだ。血液の流れが、眠気を妨げる。眠らなくても身体が疲れを感じない。血液の流れだけで身体の管理までもを完璧にこなしているゾンビ菌は、ある意味では理想の共存者なのかも知れない。

 身体自体は健康でも、その症状だけは身体に表れてしまうのがゾンビ菌の弱点だ。寝不足になれば目の下に隈ができるし、食べ過ぎればお腹が出てくる。ストレスが溜まればハゲもできるし、運動をすれば筋肉痛にもなる。

 けれど、ゾンビは死なない。

 目の下の隈は、どういうわけか僕にも制御ができない。当然母親にも隈があるけれど、母親は化粧でそれを上手に隠している。

 僕は毎日、しっかりと睡眠をとっている。眠りたいとの感情は湧いてこないけれど、生活のリズムを整える必要がある。物心つく前は、眠っていたのかどうか不明だけれど、定期的に目を瞑って身体を休ませてはいたそうだ。今でもその延長のようなもので、完全に思考が停止することはない。全ての思考を停止させてしまうと、ゾンビ菌に身体を動かされてしまうからだ。

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