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ゾンビ化した人間を見極める方法は少ない。その見た目だけでは特定ができない場合も多い。人によって違いがあり、これといった特徴は、歯に衝撃を与えると歯に開いた小さな穴から血が噴き出てくることくらいだ。
上の前歯六本に開いた穴は、普段は塞がれているけれど、ある一定の力をかけると開くようになっている。豆腐をかじる程度の力では噴き出ないけれど、リンゴをかじると血が吹き出す。お肉は微妙だ。じっくりと煮込んで柔らかければ問題ないけれど、筋があったり油の塊を噛み切ると吹き出してしまう。野菜は基本葉っぱ類なら問題ない。茎や根っこは料理の仕方によって変わってくる。
基本僕は、奥歯で噛むようにしている。前歯に衝撃が伝わらないように物を食べるのは、意外と難しいようだ。
生まれたばかりの赤ん坊には歯がない。それは残念だけれど、僕も同じだった。だから僕がゾンビだってことには誰も気がつかなかった。両手を前に伸ばす癖があっても、目の下に隈があっても、ちょっと顔が蒼白かったとしても、それが必ずしもゾンビの特徴ではなかったため、誰も僕をゾンビだとは疑っていなかった。歯が生えてくるまでは。