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初仕事

 屋敷は中庭から外装、内部の調度品まで全て統一感があり、貴族の記憶に照らし合わせても高額な代物ばかりであった。また食事を始め、メイドまでもが満足の行くサービスを提供するのだ。


「これを当然だと思ってしまうと、ダメ人間になりますね」


 戦争の最前線を駆けずり回っていた2ヶ月前とは大違いである。


 そして深夜、モンドリー商会で購入した寝間着から黒のワンピースに黒の外套に着替える。勿論、メイドの手によって。メイドもセーラの正体について、サーフェス・モンドリーから直接聞いていた。そのため…今からセーラが人を殺しに行くことも理解してるメイドの手が震えていた。しかし、メイドは思う、この華奢な肉体に人を殺す力などあるのだろうかと?


 セーラは散歩にでも行くように手を振りながら、夜の街に姿を消した。


***** ***** ***** ***** ***** 


 セーラがいるのは貴族街第三区画。多くの男爵が住む区画だ。闇に紛れ簡単にターゲットの屋敷までたどり着いたのだ。


 しかしセーラは悩む。死の標的(デス・サイズ)・【波紋の鎌】としての初仕事だ。綺麗に対象だけを暗殺するのか、ど派手に暗殺するのか…と。


 綺麗に暗殺するならば、神具(アーティファクト)本体は、ほぼ未使用。ど派手ならば神具(アーティファクト)本体が人目につく可能性がある。


 無益な殺害を好まぬ2つの魂の抵抗と、切り札を披露するには早すぎると判断し、地味だが綺麗に対象だけを暗殺することにした。


 稀代の大盗賊・青影のニルから直接教わった潜入と隠密に、バーテンダーから教わった暗殺術が加わり、より精度を増した技術。もはやセーラの存在に気付ける者など存在しない。敵の位置すら索敵の技術と神具(アーティファクト)の一つ波紋のリングによる波紋センサーのチートな能力で手に取るように把握できる。


 ターゲットの部屋の真上にたどり着いたセーラは、神具(アーティファクト)の一つ封印のリングを取り出し、ターゲットと魔力の道で繋げる。小型時限式爆弾を握り、リングの内側に手を突っ込むと、静かに小型時限式爆弾を置く。これは…ターゲットの体内とリングがリンクしているため、リングの内側はターゲットの体内にあたり、そこで小型時限式爆弾を離せば体内に仕掛けたことになるのだ。まぁ、小型のためターゲットは違和感を感じるだろうが、痛みはないはずだ。


 この方法に弱点があるとすれば、ある程度ターゲットに近付く必用があることだろう。


 セーラがターゲットの屋敷どころか貴族街も出てしまう。


 ターゲットを屋敷内で殺しても良いのだが、ターゲットの予定を思い出し、殺すのはある式典の最中に変更したのだ。そのための小型時限式爆弾だ。


 式典を見に行くのも良いが、爆死の検証のため式典会場を封鎖される可能性もあり、大人しく屋敷内でゆっくりすることにした。その代わり、昨晩衣装替えを手伝ってもらったメイドに式典を見てくるように言いつけておいた。


 案の定、メイドが封鎖された式典会場から帰ってきたのは、翌朝のことであった。


「アルデヴァー男爵が…暗殺されました…。とても凄惨で惨たらしい死に方でした」と、メイドはげっそりした顔で報告して来た。偶然にもアルデヴァー男爵がスピーチしている最中に爆死したらしい。そしてメイドは、屋敷にいる私が暗殺したのだと微塵も思ってもない様子であった。


 さて、報酬を受け取りに行くか。


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