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裏と表と暗殺者

 セーラが最終的に選んだ暗殺手段は暗器による暗殺術だ。神具(アーティファクト)本体を使用しなくても、その副作用により物理の法則を捻じ曲げ対象を死に至らしめる事が可能になったためだ。


 貴族の記憶、騎士の記憶、薬草師の記憶、楽師の記憶、盗賊の記憶を流用して作成した独自の暗器である毒針、斬糸、火薬、獣油、小笛などを使用するのだ。


 カウンターでアイスミスクを飲む少女に、あざ笑い近づこうとする筋肉自慢の男の胸部が、爆発で吹き飛ぶ。その様子を店内の全員が見ていた。カウンターにする少女は振り向くことさえしなかったのだ。


「一体…どうやって!?」


 店内の誰もが思っていたことをようやく口に出せた者がいた。その一言で、店内の時間が動き出す。


「なるほど…。では、こちらを」


 爆死した男を一瞥するとマスターは、セーラに一枚の紙を渡す。暗殺の依頼書だ。セーラは名前、容姿の特徴、住所などが書かれた紙を読んだ後に燃やす。そして、金貨1枚をカウンターに置くと、外套のフードを被り店から出た。


「綺麗な宿屋と美味しいお店を探さないと」


 中間的な魂はより女性らしくを模索中だった。


***** ***** ***** ***** ***** 


 やはり見た目は重要である。黒のワンピースに黒の外套を羽織るセーラでは、高級な宿に入ることすら出来なかった。貴族街にある宿でなく、庶民街にある大商人や一部の金持ちが泊まる高級宿屋でだ。その理由を自身の姿と理解したセーラは、とある店に入るや否や、金貨の詰まった袋をテーブルに置き、高級な宿で泊まれる服を要求した。


 あまりにも威風堂々としたセーラの物言いに、店内総出で貴族にも負けない衣装を提案してく。


「困りましたね。まだ宿も決まっていないのに、購入しても衣装を置く場所がないです」

「そ、それでしたら…。我々、モンドリー商会が経営しているホテルへ宿泊して頂ければ、衣装はそちらの部屋に運ばせて頂きますが…」

「モンドリー…。そのホテルへ入るのを拒まれたので、こちらで衣装を購入しているのですが?」


 その様子を見ていた若い女性が血相を変えて近付いてきた。


「た、大変、申し訳ございません…。我々のグループの者が…。ご無礼をお詫びいたします。今すぐ、ホテルの支配人を連れて来なさい!!」

「貴方は?」

「はい…。私はサーフェス・モンドリーと申します。モンドリー商会の15代目当主でございます。恐れながら…」

 

 跪き頭を下げるながらもサーフェルの目線は、下着姿の胸元にある五芒星がぶら下がるネックレスに釘付けであった。なるほど、裏社会の人間でなくても、わかる者にはわかるのか。


「怯えることはない。危害を加えるつもりなば、今頃ホテルは死屍累々のありさまだ」

「重ね重ね申し訳ございません」


 サーフェスはホテルよりも屋敷を提供すると言ってきた。まぁ、暗殺者がトラブルにあいホテル内で暗殺事件が発生するよりも、他者と干渉の少ない屋敷の方が長い目で見れば安上がりなのだろう。しかも専属のメイドも付けるとまで言ってくれた。


「何から何まで感謝する」

「いえ…。滅相もございません」


 サーフェス・モンドリーは、この程度の出費で死の標的(デス・サイズ)という強力無比な暗殺者とのコネが作れたことに、安い買い物だと内申ほくそ笑んでいた。

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