セーラ小隊長の大盤振る舞い
狩った獲物を運ぶために元・分隊の二人を連れ狩りに出かける。ここでも元・盗賊の技術が役立つ。人里離れ森林の奥地に入ったためか、獲物の数も山菜の量も豊富だ。
途中で、小さな滝を見つける。ふと、自分の体臭を嗅ぐと、少女のソレではなかった。
「おい、水浴びをしてくる。覗いたら殺す」
正義と規則を遵守する魂の癒やされるような声ではなく、破壊と混沌を愛する魂の心臓を鷲掴みにされるような声で言い放つ。
その体、つまり肌には、あれ程の技術を身に着けた者とは思えない…。まるで街に住む雑貨店の娘のように、傷が一つも無いのだ。
「出て来い」
セーラは油断しているつもりはなかった。しかし、その娘は…セーラの近く、岩場に隠れていた。
本来であれば、水浴びをする少女を怖がる理由などあるわけがない。しかし、この人里離れた小さな滝壺に少女が一人で来れるはずもなく、その少女の裸体からは、人間とは思えぬ恐怖を感じだのだ。
「ご、ごめんなさい…。脅かせるつもりはなかったの。わたしはフェリ。ナーブール村のフェリよ」
手を上げながら出て来たのは、16、7ぐらいの娘だった。
「そうか。運が無かったな」
セーラは、血抜きした産卵前の肥えたボーボー鳥7匹と、焼いた香りが食欲をそそるハーブ数種類と、敵国の人間を手土産に野営地に帰った。
フェリの尋問は後回しにして、手際よく、鳥の皮をはぎ内蔵を取り出し、近くにある大きな葉とハーブで詰め込み地面に産めると、その上で焚き火をするように指示した。深い森林のため火の灯りが漏れることも、太陽が沈んでいるため、焚き火の煙が目立つこともない。
天幕に閉じ込めていたフェリのもとに、アモット分隊長とバート分隊長を同伴させた。そして、一番に隠密の技術について質問する。
「その技術は何処で手に入れた?」
「これは、村の狩人なら、自然と覚えるものよ」
「では、村で何人が使える?」
「5人、いえ6人よ」
そして、滝壺にいた理由、ナーブール村に駐屯している兵の数と村民の数、村の防衛レベル、食料庫の位置などを聞き出した。
「そろそろ鳥が蒸し上がったかな」
セーラは、見張り番のために寝ている者を起こさないように、静かに夕食の前の挨拶を済ませる。そして、部下に騒がないことを指示し、鶏肉を配る。
セーラの料理は、前哨基地で提供される料理よりも、数段美味いのだ。元・分隊の部下は知っているが、他の分隊には知られていない。それを食べれば騒ぐのも無理はないのだ。しかし、破壊と混沌を愛する魂の心臓を鷲掴みにされるような声で言い放ったため、皆、静かに鶏肉を食べていた。
「それと先程捕まえてきた。娘を…そうだな…くじ引きで当たった10名が好きにして良いぞ」
全員が「えっ!?」という表情になる。少女とは言え、同じ女性からそんなセリフが出てくるなんて思ってもいなかったのだ。
勿論、頭の中で妄想はしていたが、セーラ小隊長の機嫌を損ねると、恐ろしいという事を、元・分隊の連中から聞いていたため、破廉恥なことは言わないようにしていたのだ。それなのに…。




