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裏切りと略奪

 ようやく赤子と自分の意識が一致し始めた。追われているかも知れないのに、泣いてなどいられない。しかし、まだ首もすわっていないのだ。もう少しだけ…丁寧に運んで欲しい。大きめのバスケットに入れられ、布を被せられているのだ。外の様子などわからない。一体、何処へ行くのだろうか?


(それに何処を走っているか知らないけど、人外の対策は万全なの!?)


 人外とは、捕食者、追跡者、殺戮者と呼ばれる者たちのことだ。人間が何かに寄生されて、突然人を襲うようになる。正直、追跡者を見たことがあるぐらいだ。体毛は抜け落ち、肌は爛れ、目玉が飛び出そうになっている…化物だ。追跡者の特徴は、戦闘力に乏しいが、集団で追いかけてくる。その体力は無尽蔵と言われ、獲物が疲労し動けなくなるまで、付かず離れず…只管に追いかけてくるのだ。


 それに、体が痺れている…あの産婆、何が致死量に満たないだ…。これで後遺症が残ったら、どうする気なのだ? 素人が毒に手を出すものじゃない。


(後できっちり説教してやる!!)


 特にすることもなく、今回の人生設計を考えることにした。


 生まれ変わった…その日は、必ず、統一歴766年10月4日だ。うん、これは覚えている。後は…誰かを殺すだけなのだが…。貴族として生まれた時に…あれ? 貴族の時…私は誰だったのだろう? それがわからなければ…ターゲットがわからない。


 貴族のときに何か事件が起こり、殺された? そして、前世の記憶を持ったまま生まれ変わり…何故か騎士になって…暗殺に失敗したんだっけ? また生まれ変わり…薬草師になり毒殺を試みるが、失敗? 楽師となり幻影を見せるが…失敗。さらに生まれ変わると盗賊になり…また失敗。


 狩人アリゼルが止まる。


「俺は、アリゼル。赤子を運んできた」


 緊張したアリゼルの声に反応するように、「バスケットを置いて立ち去れ」と低く響く声がした。


「待て、お前らが…ハーヴ……ごはっ!?」


(刺された!?)


しかし、バスケットが落ちた衝撃が伝わってこない…。


「お前な…バスケットを置いてからにしろと…」

「大丈夫ですって。ちゃんと俺が持ってましたから」

「まぁ、いい。それよりも、急いでここを離れるぞ!!」


 数名の声が聞こえる。今のところ、陛下、騎士、母親と老婆と狩人、そして、この集団の4勢力があるみたいね。


(人間の死ぬ瞬間…最後の最後に紡がれる言葉にならない言葉って、本当に素敵だよね)


 ふわっと、バスケットが揺れる。おいおい…。そして、馬の嘶きが聞こえる。


(今度は、馬ですか? いや…赤子って、馬の衝撃に耐えられるの!?)


 馬ならば、人外に襲われる危険性は、随分と減るけどね。馬に乗せられると、風の影響でバスケットにかけられていた布が宙を舞った。私は、片手で手綱を、もう片方でバスケットを支える男性の前に置かれていた。


「おい…。このガキ、ずっと…俺を見てやがる…」

「ははっ。トーマス。気に入られたんじゃねーか? 別れの時、泣くんじゃねーぞ?」

「ば、馬鹿言え…」

 

 お前は、いつか殺すという意味で、にっこりと笑ってやった。

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