幼女の恋愛術
「わ、私が…ラークの彼氏に?」
「きょひけんはないでしゅよ」[拒否権はないですよ]
「わかってるわ。でも、ラークと私が付き合えるかなんて約束できないわ。そもそもラークが私を好きになるとは限らないし…」
「きせいじじちゅでしゅ」[既成事実です]
興奮が隠しきれず、ニタァと不気味に微笑む幼女を見て、レイナは恐怖に顔を歪ませる。
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お兄ぃと二人だけの夕食を楽しんだ後、お兄ぃに絵本を読んでもらう。
「セーラ、今日はどうしたんだい? 笑顔なんて…何年ぶりだろう?」
「おともだちがくりゅでしゅ」[お友達が来るです]
「友達? セーラが友達?」
玄関のドアが数回ノックされた。私は飛び上がり出迎える。
「レイナ? 友達って、レイナなのか?」
リュートを持ったレイナの登場である。リュートは盗賊団のアジトから運ばせ、レイナに持たせた。そして、リュートの練習という形で、この家に持ってこさせたのだ。
「うん。セーラちゃんが、リュートの練習したいって。でも、私は、この時間しか空いて無くて…ごめんね、こんな時間で」
「い、いや…良いんだ。それより、こっちこそ迷惑じゃなかったのかい?」
「ううん。大丈夫」
三人はテーブルに座り、予定通りレイナは、リュートを私に渡す。
「最初から演奏は難しいから、慣れるため…適当に触ってみて」
「はい!」[はい!]
『人間の三大欲求である食欲・睡眠欲・性欲を刺激するのは、とても簡単なんだよ』と、前世で幻の楽師と言われた白昼夢のシュレに言われたことを思い出す。始めは適当に音を出すだけだったが、次第に…生命の根源であり、存在理由である…子孫を残す行為…性…生まれたときから刻まれている…本能…を呼び覚ます…淫乱の旋律…。
9歳と言えど…。
(あれれ? これって…。最初からリュートを使って、お兄ぃw誘惑すればよかったんじゃない!?)
淫乱の旋律により導かれた結果を見て、物凄い遠回りになった事を後悔する。まぁ、とりあえず…計画通りだ。私は、自分のベッドに入り、事の成り行きを見守ることにした。
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その日の深夜。いつまでも帰って来ないと、レイナの両親が私の家を訪ねてきたとき、丁度、飲み屋から帰ってきた父親のライズと合流し…ラークとレイナが…一緒にいる…場面に遭遇する。
それから親たちの怒号や罵声などが、いつまでも、いつまでも続いたらしい。
結局、ラークが、責任を取るという形で、話し合いは終わった。
(はっ!? 待て待て…。私が寝ている間に、何勝手に話が進んでるんだ!? しかし概ね計画通りなのだ。う〜む…。どうしたものか…)
夏祭りの朝、やっとレイナと会うことが出来た。レイナは帰った後、両親に目茶苦茶褒められとのこと。そりゃそうだろ…。安定した商品を扱う金回りが良い商人の息子と、婚約したのだから…。