表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/44

転生と誘拐

 自分の泣き声と共に意識が覚醒した。人生の始まりというのは、絶対ではないが、多くの人達に祝福されるものなのだ。前々回も、前回も、今回もそうだった。抱くことに慣れていない父親が、寝ている母に、私の姿を見せている。


(先に謝罪しておこう。良い娘などにはならなことを)

(生まれ落ちたそのときから、目指すは暗殺者…)

(うん? 誰を…殺す…。あれ? 思い出せない…。な、何故だ!?)


「フォタムは、生まれながらにして、神のご加護を授かっているのじゃろうて」


 産婆は、泣き叫ぶ私と喜ぶ両親を見て言った。


「はい。死産と思っていた…フォタムが突然、泣き出したのは、神様が…生きる力を与えて下さったからに他なりません」


(死産? 生まれてきた私は…死んでいたのか? それが…記憶が欠けている原因!?)


「今日は、収穫祭。苦しむ赤子を見て、近くに神様が来てくださったのじゃろう」

「はい。この子は私達の手を離れ、神の子となったのでしょう。大事に育てることを誓います」


 貴族の記憶、騎士の記憶、薬草師の記憶、楽師の記憶、盗賊の記憶は…ある。だけど、どうして生まれ変わっても記憶が残るのか、何が目的で生まれ変わっているのか、何より…どうして他人を殺したいのか…。全く思い出せない。


「陛下。そろそろお戻りにならないと」


 銀色に輝くフルプレートアーマーを纏った騎士が、部屋に入って来た。いや、部屋ではない。ここは…小屋? 扉の向こうは外だった。壁やベッドなどを見て、貧困層だとは覚悟していたが、まさか…王族?


「アルベルト、可愛い娘だろう?」


 アルベルトと呼ばれた男の表情は、まるで汚物を見るような…死んだ瞳だったが、どうにか笑顔を作り出し、「はい。陛下に…それにマーガレット様に、とても良く似て…将来が楽しみでございます」と心にもないことを言い放った。


 陛下の父親は、そんな事に気付かず、「そうだろう、そうだろう」と笑顔で嬉しそうに…。私は、父親の腕の中から、ある薬品の臭いに気が付いた。


 その薬品とは、皮膚に付着するだけで、対象者を死に追いやる…山蝙蝠から採取できる毒薬。この毒薬は、簡単に手に入るが、大量に付着させなければならないため、用途としては、徐々に体を弱らせ、病気に見せかけて殺すのに適している。そうだ…赤子ならば、即死級の毒薬だが、母親には、ほぼ影響がないだろう…。


(つまり…この産婆は、私を…殺そうとしていた?)


「マーガレット。もう帰らねばならぬ、フォタムを頼むぞ」

「はい。お任せください」


 父親は、母親に軽くキスをして、小屋から出ていった。残されたのは、母親と私と…老婆。


 このままでは…不味い。また殺されるのを待つだけ…。どうして…毒薬が無効化されたのか…それが知りたい。


「フォタム様は、本当に頑張ったくれたのじゃ。致死量に満たないとは言え、一時的には生死を彷徨ったのじゃ。これで…暗殺の失敗と思ってくれれば、多少は時間が稼げますのじゃ」

「どうか…無事に村から…」

「それは…若く優秀な狩人アリゼルに任せてある。もうじき来るじゃろう」


(なるほど…暗殺者が暗殺ターゲットになっているとは…笑えないわっ!?)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ