諦めない幼女
「ママは、ウバでしゅ」[ママは乳母です]
「あぁ…。乳母に教わったのかよ。確かエイラって女だ。評判は良いな」
「何だかよ、このガキが、可哀想になったきたぜ」
「じゃ、お前が育てるのかよ?」
「いや…無理だろ…」
リュートを渡された。前世で幻の楽師と言われた白昼夢のシュレに弟子入りした私は、心を掴む音を手に入れた。人間の脳はある音階により、睡眠欲や性欲と言った欲望を抑える理性を、強制的に解放させることが出来るのだ。ただ…その演奏を…3歳児で再現できるかが鍵となる。
意識を超えてた先にある…理想郷へ誘う…夢幻の旋律…。3歳児では、歌詞をまともに発音できないため、鼻歌とする???
しかし、安酒で酔った…盗賊には、十分な効果があり、バタバタとテーブルに突っ伏す。
「おねんねでしゅか?」[おねんねですか?]
ここでナイフなどで止めを刺しても良いのだが、痛みは眠りから覚醒させる可能性がある。最初の一人が騒ぎ出し、残りの三人が起きたら、結局詰んでしまうのだ。
この部屋に大量にあるアルコールランプの燃料を四人に満遍なくかける。
(次に目覚めたら、エンドレスファイヤーダンスですよ!?)
何だか楽しくなってしまい。部屋中にアルコールランプの燃料をぶちまけた。しかし、この無駄な時間が私をさらなる窮地へ追い込む。
(ぐっ!? 新手か…)
私は、ランプを手に取り、部屋の隅に移動する。
「おいおい、こりゃ…どういうことだ? このガキ…バデル達を焼き殺そうとしていやがったぜ?」
エンドレスファイヤーダンスを見たくて、注意散漫だった。かなりの隠密の使い手なのか、私に気配を悟らせることなく、この部屋まで近づき、一部始終を見ていたのだ。
「ボス? どういうことです?」
「どうやったか知らねーが、バデル達の意識を奪って、アルコールランプの燃料をぶっかけてやがった」
「はっ!? このガキがですか!? バデルは毒でも盛られたのか?」
ボスの登場か…。それともう一人。今なら、このランプを投げて、更に火薬を投入すれば、逃げられる可能性がある…。
「ボス? どこですかぁ!?」
不味い、ぞろぞろと人数が増え、通路が塞がれていく!?
「こっちだ。宝物殿だ!!」
唯一の出口が、盗賊たちで埋め尽くされた。もう迷っている場合じゃない!!
テーブルにランプを投げ、割れたランプから溢れた火で、寝ていた盗賊四人に着火させる。そして、太ももから小袋の火薬と携帯用発光玉を取り外し、燃えているテーブルに投げ込んだ。
強烈な発光と炎の壁で、廊下にいた盗賊たちの視線を遮る。その隙に、宝物殿(笑)にある大きな宝箱の中に身を潜めた。
「なんてこった!! 火が服に!!」
「火だ。火を消せ!!」
「水だ。バデル達が死んじまう!!!」
宝物殿(笑)は、可燃物が多いため、一気に火が燃え広がる。私も死ぬかも知れないが、一か八かの大勝負なのだ。




