二度目の誘拐
薄暗い路地を歩いていると、突然、体が宙に浮いた。
「こいつは…ライズ商会のガキじゃねーか?」
「あぁ、間違いねぇ。こんな薄気味悪いガキは、他に居ねぇよ」
「どうする?」
「ふふふっ。こりゃ、俺達にも運が回ってきたってことよ」
四人組の盗賊に拐われる大失態を犯してしまった。そして、薄汚い小屋に連れ込まれた。
「しかし、何でこのガキは、泣きもしなければ、怖がりもしねぇんだ?」
「だから、言ったろ…。街では、悪魔の子と言われてるんだぜぇ」
猿轡で口を塞がれ、後ろ手に縛られた状態だが、その感情が死滅した瞳は、盗賊たちを見ていた。
「こいつの瞳…マジで気味が悪いぜ…魂が鷲掴みにされているようだ」
「おい、ガキ、こっち見るんじゃねぇ」
言われた通り、盗賊団から視線をそらし、部屋の中を見渡す。何か…殺せる道具はないのかな? ここは物置なのか? やたら道具や大きな宝箱やらが散乱している。
「だがよ、身代金、ライズ支払わねぇ可能性もあるぜ?」
「なんでだよ?」
「ほら、このガキ…死んでくれたら、ライズもラッキーなんじゃねーのかって」
「た、確かにな…」
「だったら、どうするんだよ?」
「まぁ、不気味だが、顔は悪くねぇ。奴隷商人にでも売っちまえばいい」
「それは後だ。とりあえず、やることやって、飯にしようぜ」
四人の盗賊が部屋から出て行った。足音で遠くに行ったことを確認すると、盗賊時代の縄抜けの技術で両手を自由にする。
先程、目星を付けておいた、投擲用の小型ナイフを数本、毒薬かと思ったが…痺れ薬の小瓶を2本、携帯用小型ナイフ、携帯用発光玉、小袋の火薬、着火道具を入手する。これらは、ワンピースの中、腰回りと太ももに、置いてあったベルトで固定した。
またお土産として、金貨数枚と、幼児が持っていても違和感のない…高価に見えない玩具の人形を手にした。
さて、どうするか…。拐われて、この部屋に連れて来られたときに、脱出経路は、確認済みだ。扉を出て…盗賊たちがいる方向しかない。逆方向は行き止まりだった。しかし、この幼児の戦闘力では、初撃の投擲ぐらいしか大人を殺せる方法はない。つまり、一人を殺せても、残り三人を倒す手段がないのだ。強行突破は不可能だろう。
とすると、他の脱出経路を見つけるしか無いが、残念な事に…ここは地下なのだ。天井や床から抜け出すことも出来ない。
あれこれ考えていると、盗賊たちの足音が近づいてきた。まずい…元の位置に戻ると、縄で自分の手首を縛り、大人しく座る。
「ちっ、相変わらず、不気味なガキだぜ」
「縄を解いてやれ、流石に、飯を食わせないとな」
「お前が、縄を解けよ? 俺は嫌だぜ」
そこまで嫌われているのか…。
縄を解かれた私に、パンと干し肉が渡された。盗賊たちは、折りたたみ式のテーブルと椅子を設置すると、骨付き肉やら安酒などを、運んできた。
「おい、腹減ってねぇのか?」
「馬鹿だな。この状況でガツガツ食えるわけねぇだろ?」
何故か、カチンと来たので、ガツガツ食うことにした。




