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プロローグ

 ここは子爵であるオースティンの城塞の城壁内を見下ろすことが出来る崖から伸びた大木の上。彼には、恨みどころか出逢ったこともない。しかし、殺せと言われれば、殺すしか無い。


 掌の上に浮かんだ大中小の3つのリングが重なり、各リングが縦横斜めと…違う方向へ回転を始め、それは一つの球と呼べるほどの回転速度に達した。


 狙うは、城塞の廊下にある小さな窓。距離にして、約7,500mだ。実のところ、その廊下にオースティンがいることも、小さな窓さえも、この月明かりの下では…。いや、この距離では、視認することが出来ない。

 

『ターゲットが部屋を出ました』声が脳に直接語りかけてきた。


 直立した崖特有の吹き上げる突風により、外套のフードが脱げ、月明かりの下に顔を晒した。ナチュラルボブの銀髪は、月明かりで輝くのだが、同じく銀色の瞳は、マットシルバーと呼べば良いのか、死を連想させていた。その幼さの残る輪郭から、年齢は12,3歳ではないかと想像できた。


 突風など無かったかのように、集中していた彼女は、ヒョイっと掌に浮かぶ球体を城塞の小さな窓に向けて投げる。珠は投げ出された初速度から想像も出来ないような速度に加速し、城塞に向かって飛んでいく。


『球体確認。軌道修正要請。右13、上5』


 玉を投げ終えた少女は、目を瞑り…頭の中で、言われた通り球を動かす。


『軌道修正要請。右4、上1』

『軌道修正要請。左1』

『侵入確認。全員撤収開始』


 城塞の小さな窓から侵入した球は、ハンマーで大岩を叩いた様な音を出しながら跳ねる。その珠は、跳弾となり、大きな音を立てながら、ターゲットへ向かった。


 オースティンと城塞内であるため少数の護衛は、近づいてくる不気味な音に対して警戒するが、丁度、渡り廊下を通っていたため、オースティンを匿う部屋がなかった。


 先頭にいた若い護衛は、小さな球の存在を認識するが、次の瞬間、顔面を潰された。顔面から飛び跳ねた球は、渡り廊下の壁に激突し、また跳ねる。そして、オースティンを狙い跳ねた球を、護衛が身を挺して守る。鎧の砕ける音、背骨が折れる音が、渡り廊下に響いた。


 オースティンは、守られた護衛の下敷きになり、動けずにいた。その仰向けに倒れたオースティンの顔面に向かって、跳ね返ってきた球が当たり、床と球に挟まれた頭部は、肉片となり飛び散った。不思議なことに、ターゲットを仕留めた球は、何処とも無く消えていたのだ。


 崖から伸びた大木の上いる少女の目の前に、縄が下りてくる。少女は、縄に捕まり、懸垂下降を開始した。縄は30mしたの山道まで伸びており、少女は山道に待っていた謎の集団に出迎えられた。


 集団から一人の成人男性が歩み出ると、少女は男性に抱きつく。


「お兄様。どうにか成功しました」

「よくやったな。しかし、貴族狩りの1つに合格したに過ぎない。後6つを成功させて、なるべく早く、俺の元に戻っておいで」

「はい! 勿論です」


 少女は、お兄様と呼ぶ男性から離れたくなかったが、周囲の目が気になり、次の指示書を受け取ると、人外が襲ってくることを警戒しながら、山道を一人歩き始める。


 この物語は、王族の元から連れ出された赤子が、巡り巡って暗殺を生業とする一族に拾われ、王族とは真逆の生き方を叩き込まれた少女のお話です。


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