3人の恋物語
開王学院はお昼時になると、校内放送が流れだす。
普段はヒットしている音楽を流すことが多いが、全校生徒に向けたメッセージや部活動に関することなど内容は様々だ。
生徒にとっていつもあまり意識しないことで、せいぜい好きな音楽が流れた時など、仲間と反応するくらいのことだった。
だが、今日ばかりは違う。
雄太は4時限目が終わると同時に放送室に駆け込んでいた。
「いきなりそんなこと言われてもなあ」
「いいじゃない、面白そう」
頭を下げ放送部の人にお願いをし、了承してもらって準備は整った。
深呼吸しその時を静かに待つ。
ラジオ番組の司会のように、音楽の切りのいいところで放送部員の人が生徒に呼びかける。
一生徒がどうしてもこの場で伝えたいことがあると促したところで、あとを雄太に譲った。
「……葵先輩……僕は先輩にいつも助けてもらってます。先輩の存在にどれだけ勇気づけられているかわかりません……」
雄太の脳裏には葵の顔しか浮かばない。
「ようするに僕は先輩が好きです。大好きです」
今まで何度も言ってきた言葉だったが、今日はいつもよりもさらに気持ちを込める。
「たまらなく好きです、手をつなぎたくなるくらい好きです。頭の中は葵先輩のことでいっぱいです」
放送部員たちの歓声と声援が室内に響く。
校内もある種異様な盛り上がりになっていた。
そんな中で勢いよくドアが開き、顔を真っ赤にした葵が入ってくる。
「ゆ、雄太、あ、あなたはなんでそう、空気を読まずに行動するのよ」
「すいません、僕、陰キャなので空気とか読めません」
「陰キャはね、何度も大々的に告白なんてしないわ」
「そうなの! 先輩、朝はすいません。誰を敵に回しても、どんなにそれが困難でも僕は先輩のことを大好きでい続けます。もっともっと頑張って、それで……」
「ほんとに想像以上のことするんだから……頑張らなくていいわ。言ったじゃない、嫌いじゃないって。わ、私、告白された時はいつもちゃんと断ってるわよ」
「えっ、僕ちゃんと断られてないです」
「だ、だから、そういうことよ」
「そういうこと?」
雄太は顎の下に手を当て、葵の言葉の意味を真剣に考える。
それは葵なりの精いっぱいの素直なやり取りだった。
「ちょ、馬鹿。マイク入ったままじゃない!」
「えっ、はい」
葵とのやり取りも見事全校生徒が知ることとなり――
以後、2人は全生徒の誰もが知る似合いの2人となった。
そしてこの雄太の行動で、毎週火曜日は告白の日というのがなぜか浸透し――
翌週には杏が、さらに翌週には葵が想いを告げることになる。
月日は少しだけ流れたある日。
「はっ、杏、今なんて言ったのよ?」
葵はさぞ落ち込んでいるであろう杏を慰めるべく部屋をノックした。
「だから、雄太君じゃなくて今日からはお兄ちゃんって呼ぶ」
「お兄ちゃん!」
「あたしはお兄ちゃんに言われたの。徹底的に頑張れって。だからまだ諦めないよ。お姉ちゃん、勝負」
「……さらに傷ついてもしらないわよ」
「お姉ちゃんこそ、雄太君にあたしが告白したからやきもきしたくせに」
「あなた、雄太のことを私が想ってるって気づいてたの?」
「当たり前じゃん。雄太君くらいだよ、気づかないのは……」
「……」
言い合いを始めそうな葵と杏を止めるかのように、呼び鈴が鳴る。
葵はふっと笑みを浮かべ、それを見た杏はちょっとむっとして玄関へと駆けていく。
「お姉ちゃん、あたしのデート邪魔したから今日はついていくね」
「邪魔してないでしょ。あたしは遠くから観察してただけよ」
「そうだ、彼女はあたしだし」
「まだそんなことを!」
これは3人の恋の物語だ。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
ここで完結とさせていただきます。書けば書くほどに未熟さを知る毎日で……最後の方は特に読みにくく、かなり断片的になってしまいました。
ほんとに読んでくれている人に申し訳ないです。
次作はあまり期間をあけずに短編を書こうかなと思ってます。
作者をお気に入りしていただくと嬉しいです。
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またお読みいただければさらにさらに嬉しいです。




