頑張る2人
見上げると満天の星が輝いていて、それはまるで雄太の気持ちそのものを表しているようだった。
お昼の時は葵が近くにいすぎて、気絶してしまうくらい嬉しかった。
思い出すだけで飛び上がるくらい興奮してしまう。
少なくとも嫌われているわけではないとわかった。
明日からまたお弁当作りも再開する。
もっともっと葵を好きになれそう、そんな気分だった。
ランニングに出かけた雄太は、意識していなくても葵と杏が住むマンションに自然と吸い寄せられる。
それはまるで磁石のようで、抗うことなど出来なかった。
雄太がこの時間に来ると読んでいたとばかりに――
マンションの玄関前には杏が少し落ち着かない様子で待っていた。
待ち合わせや特に用事があるわけではなかったこともあり、
「何かあったのか?」
つい雄太の第一声は気遣う言葉になってしまった。
「うんうん、あたしも雄太君のことはお見通しだからね」
「なにぃ!」
「テレパシーが伝わってきたの。今から行くって」
「マジかよ! エスパー杏」
「すごいでしょ……ちょっと話があります」
杏が敬語になるのは珍しく、雄太は少し身構えながらも――
昨日と同じ公園に移動する。
「話って?」
「2つあって、まずはどうもありがとうございました。恩に着ます。ていうか、感謝しかなく申し訳ないよ」
「なんも言うなと伝えたのに」
「いや、言わせてよ。ありがとうは素敵な言葉だよ」
「じゃあ僕もありがとう」
「ずるい、ずるいよ、雄太くんは言われる側なのに」
「はいはい、もう一つの話は?」
ふうと息を吐き、杏は可愛らしく小首を傾げ、
「雄太君、大好きだよ。もうね、どうしようもないくらい大好き」
「またっ……」
「いつも優しくて、頼りになって、カッコいい、ちょっとアホで、ちょっとドジで頑張る雄太君があたしはこの世界のだれよりも一番好きです!」
「おう、やっぱりありがとうだな」
つい数日前と今ではなんだか受ける印象が違った。
「雄太君も想っていること全部言って!」
「……俺も杏のことは好きだ。はっきり言って大好きだ。でも、それ以上に好きな人がいる」
「知ってる」
「たぶん、普通ならだから諦めてくれとか、ありがとう嬉しい。でも……見たく言うんだろうけど、僕は厳しいから違うことを言う」
「えっ?」
「恋を徹底的に頑張れ。僕も今以上に頑張るからさ」
「はいっ!」
杏は雄太の手を引いて、少し前のめりになったところで頬にキスしてきた。
突然のことで、触れた瞬間に血液が沸騰するくらいに体が一気に火照る。
「なっ、なっ、なにしてる! おい、僕はその辺踏み込んでないんだぞ」
「じゃああたしは雄太君より頑張れたかな?」
「お前……」
「んっ?……」
なんだか可笑しくなって、雄太と杏は顔を見合わせ笑いあった。
☆☆☆
次の日、校舎裏へと雄太は葵に呼び出される。
この場所は雄太にとって思い出の場所で、葵にここで想いを告げたことがあった。
「なにか私に言うことはないの?」
いつもより近い距離で、いつもよりも不機嫌な葵。
「いっぱいありすぎて困ります」
「なら、今一番言いたいことは何?」
「今日も一段と可愛いです、葵先輩」
「なっ……そういうことじゃなくて、いつものほら、想いを告げるてきなやつは……」
「それは、我慢して溜めてます」
「……そんなこといって、杏を…………なんじゃないの?」
雄太は瞬きして小首を傾げ、それを見た葵はさらに不機嫌になり背中を向けた。
この場で気持ちを伝えるのは簡単だ。
でも、それじゃあ今までと同じ。
もう少しと逸る気持ちを抑えながら雄太は震えていた。




