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君の魔法をたべたい、は。  作者: 偽ゴーストライター本人
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終章

 大地震から一年半あまり経過していた。

 まだまだ寒い日が続く三月の下旬、被災地にある大規模コンベンションセンターでは『世界の大魔法展』が開催されていた。ここは日本で最後に魔法現象が確認された港からも近く、今年のGWまで続く被災地復興の目玉イベント会場としてはうってつけの場所だった。

 魔法展の開催初日、会場には日本全国から多くの魔法ファンが詰めかけていた。

 その会場を取材に訪れていた若い男性雑誌記者は、今回の魔法展開催に胸を弾ませていた。彼は昨年の春に出版社に入社したばかりのルーキーだったが、そんな彼も根っからの魔法ファンだった。彼が就職活動をしている時期に巨大地震が発生し、そしてあの魔法騒動が起こった。彼も魔法ブームの波に乗りたかったのだが、彼が就職内定を決めた頃には日本から魔法現象は消えてしまっていた。彼はネット掲示板で米軍の無謀行為を糾弾したし、米軍を抗議するデモにも参加した。今にして思えば学生時代の若気の至りだったが、それでもその頃よりは彼も成長しているはずだった。しかも仕事で魔法の聖地を訪れることができたたのだから果報者に違いない。だから彼も精一杯に会場の取材をしたし、書くべき記事のネタも大量に仕入れた。

 そんな彼が会場周辺で来場者にインタビューをしていると、人混みから逃げるように会場を出てきた中学生カップルに目がいった。彼がその二人に注目したのは女の子が背の高い美人だったこともあるし、相手の男の子が背の低いぽっちゃり体型で、そのアンバランスさが絶妙なカップルだったからだ。そんな二人が面白そうだったので彼はインタビューを申し込んでみた。彼が話しかけると二人は少し驚いていたようだったが、雑誌の名前を言って取材内容を説明すると男の子は好意的に、女の子は渋々ながら取材に応じてくれた。

 早速、彼は二人がこの魔法展を訪れようと思った動機や会場に入った感想、魔法に興味を持ったきっかけや二年前の魔法現象の思い出など、地元に住む子供ならではの感想を訊いた。男の子は協力的に取材に応じてくれたし中学生にしては秀逸な意見を述べ、彼が思わず唸ってしまうような大人びたコメントをした。それに対して女の子はずっと非協力的で、彼の質問にもあまり多くを語ろうとはしなかった。彼は男の子との会話が面白かったのでロングインタビューを敢行したかったのだが、女の子の機嫌が悪くなりそうだったのでそれは断念した。

 彼は聞き逃したことがないかと質問内容を振り返っていたが、最後に今までの人とは違うテイストの質問をぶつけてみようと思った。この男の子なら面白い答えが期待できそうだった。

「もし魔法を使えるようになったら・・・君たちは魔法を使って何がしたい?」

「えっ?」「・・・え~?」

 男の子と女の子とでは明らかに反応が違っているのが不思議だった。せっかく魔法展を見にきたのだから、彼も女の子には魔法に興味を持って貰いたかった。一方の男の子は真剣に答えを考えているようで、彼はこの男の子が自分と同類なのだと確信していた。

 そんな男の子が口を開いた。

「そうですね~・・・僕なら世界を救う正義の・・・」

「あたしたちは魔法なんかいりません・・・ごめんなさい」

 男のが答えを言いかけたところを女の子が途中で遮った。そして男の子の腕を掴んで引っ張った。明らかに『もう帰ろう』の空気を出していた。男の子は何か言いたそうな顔をしていたが、それでもすぐに諦めたように肩を落とした。

 男の子は彼に一礼したままの姿勢で女の子に引きずられるように去っていった。

 彼はそんな男の子に同情した。

 そしてこれからも苦難に負けずに魔法ファンでいてほしいと思っていた。

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