表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/136

93話 女の闘い

「零くん、この前買ってもらったやつ読んだよ!」

「お、早いな! どうだった?」

「思った以上に面白くてのめり込んじゃった!」


学校の昼休み。5人は食堂に来ていた…のだが。


いつものように雨宮と高宮が零の隣に座ると思いきや、大宮がさらっと零の隣を奪取した。


それだけでも、2人にとっては驚きではあったが、どうやら何か楽しんで話し込んでいる。


「沙彩さん、なんかあの2人の距離感、近くありません?」

「そ〜? れーちゃんも大体あんな感じだけど〜?」

「そういう話ではなくてですね」


音宮は「仲がいいならいいじゃん〜」と言って、「それよりご飯〜」と静かにご飯を食べている。


「何なら今日も買いに行くか?」

「ううん、今日は零くんの部屋にある本棚を見ていこうかなーって思ってる!」

「ちょ、ちょっと待ってください。昨日2人ともいないと思ったら、2人で買い物をしていたのですか?」


それは聞き捨てならないと、高宮が口を挟む。


そのちょっと焦った表情に、大宮は屈託のない笑顔で返す。


「うん! 一緒に本屋に行って、そのあとはちょっとだけどお茶したんだー!」


零はその自然な笑顔に、何の悪意も感じなかったが、高宮には分かった。


これは確実に牽制しにきている、と。


そう思った高宮がやることは一つ。


「そうは言っても、あまり読めていないのでは? 飛鳥さん、ずっと本を読んできましたしライトノベルでは物足りないのでは?」


大宮を引きずり下ろすことだ。


大宮はラノベを読めないと零に思わせることができれば、同じ土俵に立てる。


だが、高宮が相手をするべきなのは大宮だけではない。この場合は零も敵なのだ。


「いやいや、零くんが色々と加味して選んでくれたおかげで、すごく楽しく読めたんだー!」

「えっ…?」


それにはさすがに純文学の姫こと雨宮も驚きを隠せない。


「そんなにおもしろかったんですか…?」

「うん!」


雨宮が目を輝かせ始めた。


彼女はラノベに対する偏見は薄いし、本に関する好奇心は強いので興味を持ち始めた。


「ちょっと京華さん…⁉ あなたもそっち側につくんですか?」

「えっ、えっ」


雨宮だけは味方のままでいてほしいと、高宮は雨宮の肩を揺するが、もう少し取り込まれてしまっている。


そして、ダメ押し。


「零くんって、ちゃんとわたしのことを考えて選んでくれるんだよ。過去のこととか今の生活とか性格とか全部考えてくれる。わたしが感情移入できそうな本にしてくれるんだよねー!」

「む、当たり前だろ。薦める相手をちゃんと考えなれけば最善の本は選べん。3時間でも半日でも付き合ってやる」

「さすがに4時間も本屋にいた時は大変だったけどねー」


「よ、よじかん…」


高宮は絶句して気を失いかけている。


その横で雨宮が「4時間って何時間ですか」と思考停止。


それを楽しそうに見ている大宮とキョトンとしている零、それにご飯を食べている音宮。


カオスである。もはや収拾がつかなくなっており、どうしたらいいのやら、という状況になった。


「ほら、そろそろ授業始まるから戻るぞ」


そう言って立ち上がる零に続いて、それぞれが食器を持って付いていく。




「今度私にもおすすめを紹介してね〜」

「わ、私も…!」

「零さん、私には1番時間をかけてくださいね」


まあつまり、事の成り行きは落ちるところに落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ