82話 零の誕生日 後編
夕食の時間がいつもより遅くお腹が空いていたため、5人は机に乗っていた料理を全て片してしまった。
「さすがにもう食べられんわ~」
「はーおいしかったー!」
音宮が膨らんだお腹を抑えているのに対し、大宮は大量のエネルギーを獲得したようでテンションが一段と上がっていた。
「じゃーそろそろプレゼント渡しましょー!」
そのままのテンションで大宮が号令を上げると、4人はそれぞれ椅子のしたからプレゼント用の包みを机に乗せた。
「プレゼント…」
プレゼントもあるのか、と零は言いたかったのだろうが驚きのあまり上手く言葉が出なかった。
「じゃーまずは私から!」
そういって大宮が渡してきたのは髪の色と同じピンクの小包みだ。
「開けていいのか?」
「うん、開けて開けてー!」
大宮の許可を取って零が包装を取り除く。
「これは…ミサンガか?」
出てきたのは、さまざまな色の毛糸で編まれて輪っかになっているミサンガだった。
「そうそう! マフラーとかにしようと思ったんだけど、さすがにまだ付き合ってないのにそれは早いかなーと」
高宮が大宮のことをキッと睨んだ気がするがそれは気のせいであろう。
「さすが大宮。分かってる、って感じだな。ありがとう」
「えへへ…。ちゃんと着けるんだよー!」
大宮は交友が広いためプレゼントの仕方についてある程度詳しいのだろう。ちゃんと関係を間違えずに贈り物をしている。
「では次は私ですね」
そういって大宮のよりは大きい包みを高宮が零に手渡しした。
「? なんだ?」
「ぜひ開けて確かめてください」
言われるがままに開けてみると、中には黒色の長財布が入っていた。
「…オシャレすぎないか? 革でできてるし…まあ高宮らしいといえば高宮らしいが
…」
決して悪い意味ではないが、高宮はお金に関わるイメージが強いため、財布というのは高宮らしいと思ってしまう。
だがいかんせん高そうなものであるため、零は申し訳なさから気後れしている。
「何をおっしゃっているんですか? 中には私と零さんの名義で作ったクレジットカードが入っていますよ? 1千万円ほどしか入っていませんが」
「ほんとにお前らしいなぁ! そんなん使えるわけねえだろ!!」
ーー財布は見た目以上に重かったというか、愛が重かったというか。
「さっきの俺と大宮の会話きいてたのか!? よくあの後に出そうと思ったな!?」
「私と零さんはもう婚約しているようなものじゃないですか…♪」
「そんな重大な約束、お前とは絶対してないわ!」
零は財布だけありがたく受け取って、中身のクレジットカードは高宮に返した。
「じゃ〜今度はわたしだけど〜」
といって自分の包装を自ら開ける音宮。
中からはCDが数枚出てきた。
「それ…もしかしてお前の作ったロックとかじゃ…ないよな?」
「ぜんぜん〜。そんなことないよ〜。わたしの好きなクラシックの曲をいくつか弾いたから好きな時に聴いて〜」
その言葉に、零は唖然、いや愕然とした。
「お前が…普通の…プレゼント…!?」
「何を失礼な〜」
実際は、雨宮に止められて仕方なくロックを断念したのだが、話の雰囲気を壊さないように音宮は黙秘した。
「ここまで順調だと、むしろ怖いんだが…。雨宮、大丈夫だよな?」
「むしろ1番安心していいところなんですけど」
ちょっと怒りながら雨宮が手渡してきたものを開けると、中にはお洒落な万年筆が入っていた。
「すみません…。特に何も思いつかなかったので、ありきたりだとは思いますが…」
雨宮は申し訳なさそうに言っているが、反対に零はとても嬉しそうだった。
「いや、すごい嬉しいわ。最近、万年筆に興味持っててちょうど欲しかったところだった」
興味を持ったきっかけについてはあえて触れないが(ラノベ)、零はとても嬉しそうにもらった万年筆を色々な角度から眺めている。
「ありがとう、雨宮。さんくす」
まじめにお礼を言うのが途中でこっぱずかしくなったのか、目を逸らして礼を言う零に、雨宮も安心したようで
「いえいえ、気に入ってもらえてよかったです」
とありがちなお礼を返しておいた。
「ーーあ、俺もクリスマスプレゼントがあるんだけど」
「え」「うそ」「あら」「まじ〜?」
「ほら、これ。お前らが喜びそうなラノベ、チョイスしといたから」
雨宮には数学を使って国を復興させる本、大宮にはリア充男子の学園物語、高宮にはゲームで学校を支配する本、音宮にはクリエイター達のラブコメを渡した。
「零くん…」
「あちゃー…」
「そうきましたか…」
「う、う〜ん…」
それぞれ思うところはあったが、誕生日ということで許すことにした。
報告が遅れましたが、この作品がPV300万件を突破しました!
みなさんのおかげです!本当にありがとうございます!




