80話 クリスマスイブ
テストも終わり、終業式の日も終わって零たちは冬休みに突入した。
言うまでもなく零たち5人は全員Sクラスに残留である。
そして、今は12月24日。
世がクリスマスイブと騒いでいる日だ。
「冬休みか~最高だな~」
そんなやれ彼氏だやれ彼女だとリア充ムードに盛り上がっているのを気にもせず、零は部屋にこもってベッドの上でラノベを読み耽っていた。
冬休み1日目、零はうっぷんを晴らすかのように部屋に閉じこもって好きなことを好きなようにやっている。
実際に、明日が休みだからと言って零は徹夜でアニメを見まくっていた。溜まっていた秋クールのアニメをここぞとばかりに1話から視聴してはうふうふしていた。
完全にオタクである。
今日は雨宮達も朝からどこかに出かけていて帰ってくる気配もないのでやりたい放題である。
「ああ、最高っ。冬休み、最高っ。自由、万歳」
好きなことを好きなだけできることのありがたさを噛みしめていた零だった。
「わかってるよね、明日が何の日か」
「明日~? クリスマス~?」
「はい、さーちゃん。古典的なボケは要らない」
大宮たち、いや、雨宮や高宮も含めたこの4人が来ているのは寮から少し行ったところにあるショッピングモールの2階のとある喫茶店。
そんな場所を選んだ理由はもちろん、見つからないようにするため。
誰に? それはもちろん。
「明日は…零くんの誕生日です」
零に見つからないように、である。
「それでもクリスマスが誕生日とか持ってるよねー」
「もちろん、零さんはキリストの生まれ変わりと言っても過言ではありませんから」
「それはさすがにありえないからね!? 敵を作らないでね!?」
高宮は零の誕生日を祝えることにかなりうきうきしているようで、今日はいつにもましてテンションが高い。
いつもは俯瞰した物言いの高宮が、今日はかなり積極的である。
「それにしても零っちは何が欲しいんだろ~?」
対照的にいつもと同じ調子なのは音宮だ。とはいっても、いつもはテコでも寮から出ないからそれを考慮するとするなら少し乗り気ではあるらしい。
「まあ、無難にいくならアニメのキャラグッズとか?」
大宮は分かりやすくやる気で、前日である今日から服装に気合が入っていて普段はあまりしないイヤリングを付けている。
「それは間違いないとは思いますが…あまりにも味気ない気がします…」
そして、やる気を隠そうとしているが溢れ出てしまっているのが雨宮。
実際に、この誕生日の企画をしようと提案したのも雨宮である。
大宮や高宮は個人で準備していたのだが、雨宮は個人で準備して誕生日を祝福する勇気が出なかったため、他人を巻き込んだ、というのが事の経緯だ。
「それならどうしようか?」
「島とかでもいいでしょうか?」
「どこのハリウッド俳優ですか…」
高宮はとりあえずお金をかけるというのがコンセプトらしい。
「じゃ、私が曲をプレゼントしよ~かな~」
「お、いいじゃん沙彩ちゃん!」
「任せて~。最近作った新しい曲があるんだ~。ロックのテンションが乗ってくるやつ~」
「……」
「ちょっとなんで黙るのさ~京ちゃん?」
芸術分野においてどのジャンルでも秀でている音宮だが、どうしても彼女が作るロックだけは聞けたものではない。あれは公害レベルだ。
それなのにロックしか作らないのがまた良くない所なのだが。
「ま、まあプレゼントの話は置いておきましょうか…。先に明日の段取りについて確認しましょうか」
「そ、そうだね!」
話が進みそうにないプレゼントの話は後回しにして、雨宮は先に誕生日当日の話に変えた。
「明日は寮の食堂を貸し切る、ということでいいんだよね?」
「そうですね、あそこなら夜の8時以降は誰も使わないでしょうし、豪華なシャンデリアもありますから雰囲気も出ます」
「メンバーは私たちと零さんだけでいいんですよね?」
「元会長さんはあまり零くんと仲良くなさそうでしたし、他に呼ぶ人と言えば零さんの妹さんでしょうが、どうしましょう」
「後で聞いて見よっか」
元生徒会長で、零の出生について知っていた伏見薙は零と軽く対立をしていたので満場一致で却下。
零の妹の入江美月はその後電話したところ、「兄さんが帰ってきたら私がたくさんお祝いするので大丈夫です」と嫌味を言われたので今回の出演は見送りとなった。
「ケーキは私の方で手配しておきますね」
「ありがとうございます、玲奈さん。できるだけ普通のやつでお願いしますね」
「もちろんです。承りました」
一抹の不安が残るが、高宮に任せておけばその道のプロが作ったかなり良いものが出てくるのは間違いないので、雨宮は高宮に頼んだ。
「…よし、これで大体の流れは出来ましたね。あとは皆さんが考えていた案ですが…」
明日は零の誕生日。
零が生きてきた17年間で一番楽しい誕生日でクリスマスにしようと、この日の作戦会議は夜遅くまで続いた。




