7話 初めての寮の夜
俺は雨宮が部屋を出てから、現実から逃げるようにラノベを読んだ。
これから毎日一時間も拘束されるのか。どうやって一時間も過ごせばいいのか。別に勉強は嫌いではない。やれと言われればやる。ラノベが家になければ。しかも一時間も女子と一緒にいるのはもはや苦痛と呼べるだろう。雨宮と一時間とかほんとに苦痛だろ。絶対勉強以外させてくれないだろうし。
後悔の海を航海中。
……つまんね。
零はまた別のことを考える。Sクラスの特権についてだ。
どこまで適応されるのだろう。他人のテストの結果を見ることができるということは、相当なことが可能になるはずだ。どの辺が境目になるのだろうか。例えば、嫌いなやつを別のクラスに移動させたりとか。この辺は多分アウトかな。他人に被害が及ぶ程になると多分不可能だろう。この特権で図書室にラノベを入荷することくらいは可能かな。自分の本が欲しいからそんなことはしないけど。
そういえば、高宮玲奈という人、よく気が付いたよな。点数だけ見て、もしかしたら全部平均点かもなんて思うだろうか。多分、相当頭がきれるやつだ。ざっとIQは150は下らないだろうな。
それにしても、Sクラスは案外面白いな。そんなに頭の回る高宮がいて、そいつを抑えて上にいる雨宮。大宮も勉強出来るうえに、スポーツは全国トップクラス。音宮は芸術の面でたくさんの賞をもらって注目されていたことくらいは俺でも知っている。
意外にもSクラスで充実した生活が送れるのかもしれない。オタクを卒業しよう、とは微塵も思わないが、ラノベを読んだりゲームをする以外にも楽しめるのかもしれない。
そんな淡い期待を浮かべながら、また零はラノベを読みふけって、オタクとしての充実したライフを楽しむのであった。
次の朝、起きて顔を洗っているとコンコンとノックする音が聞こえた。
「はーい」
「朝ごはんができたようなので着替えて食堂に来るようにとのことです」
雨宮の声だ。
「わかった」
「これから毎日この時間なので、よろしくお願いします」
「というか、なんで雨宮が?」
「私、隣の部屋なので」
男子と女子って、階が分かれてないのか。
というか、多分これ、順位で一番から順に部屋が並んでるのだろうな。
零はこれから起こる波乱万丈の日々を予期しながら、それに目をつぶって食堂へと向かっていった。