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68話 次の作戦は…

「だんだん冷え込んできましたね…」

「うーっ、さむい…」

「シャキッとしてください、沙彩。早く零さんを見つけないと手遅れになってしまいますよ」


 そう言いながら自分も焦る。


 零を探し始めてから4日目。文化祭まで2週間を切ったところだ。


「零くん、一体どこに行っちゃったんだろう」


 大宮がふとぼやく。


「やっぱり頼みの綱は玲奈さんですけど…」


 ちらりと横を見る。


「むー! GPSを頼りに来たのに、そこら辺の犬に付けられてたなんて!! 誰がこんなことを…」


 完全に後手に回っていた。零がいなくなってから初めて起動した、高宮が零の携帯に付けていた発信機は白っぽい毛並みのチワワに付けられていた。


「零っちがそんなことしたのかな…。やっぱり見つけられたくないのかな~…」

「何故そんなことを…」

「でも本当に打つ手なしだよ! 八方塞がり!」

「零くんが都内のどこかに転校していないか三日月先生に調べてもらっていますが、そちらの方も難航しているみたいです…」


 都内の高校を片っ端から調べたが、今のところ転校生すらいないらしい。


「れいにゃんのご両親とかに頼めないかな?」

「そ~だよ! その手があった! ないす~あすっち」

「いや、それも無理ですね」

「え? なんで~?」

「私の家は確かに財産を有しておりますが、政治家との癒着がありまして…」

「あ…」

「ですから、事情を話したら高宮家まで敵に回してしまう可能性が高いと思います」

「そうなったらもうだめだね…」


 高宮は日本の経済を担う財閥の一つ。政治家との関係は切っても切れないものだ。


 高宮は事実を伝えただけだが、何か今回の件で自分が役に立っていないことが露呈したような気がして、申し訳なさを覚えた。


「はあ…どうしたらいいんだろう…」


 重苦しい雰囲気が再三と纏わりついてくる。寒い空気と相まってどこか緩慢な時間が流れる。


 零の雲隠れ、孤立無援、文化祭というある種のタイムリミット。あらゆる状況が向かい風となって雨宮達に襲い掛かる。


「今日はこれくらいにして、この土日にまた対策を考えましょうか…」


 と雨宮が諦めながら言ったとき、妙案を思い付いた者が一人いた。


「――ねえ、いっそのこと零くんの実家に行ってしまった方が早いんじゃない?」

「零さんの実家…というと神宮家ってことですか?」

「うん」

「でも飛鳥、神宮家には零くんはいないっていう結論にならなかった? 事情はどうあれ今は入江という苗字になってるんだから」


 もちろん零が実家にいるのでは? という予想は一旦立てたが、苗字が変わっていることや、零と神宮家の関係は今はほとんどないと言った三日月先生の言葉から、最終的に零が実家に帰ったということはないだろうと判断したのだ。


「それはわかってるけど」

「じゃあ飛鳥、なんで神宮家に行こうなんて思ったのですか?」

「いや、その零くんのお父さんお母さんなら零くんの居場所くらい知ってるんじゃないかなーっと」

「まあそれはそうかもしれませんが、神宮家の方たちが私たちに快く協力してくれるでしょうか…?」

「そこはわかんないけど、なんとかなるんじゃない? そこの家は京華ちゃんの家とは敵対してるんでしょ? だったらその相手側の京華ちゃんが味方に付いた方がいいと思ってるはず!」

「そうですが…」


 それでもその判断を渋る雨宮。どうしても神宮という未曽有の脅威に対し、面と向かって関わろうという気概は持ち合わせていない。


「でもさ~神宮っていう家がどこにあるかもわからなくない~?」


 ここで音宮がふと疑問に思う。


「たしかに…」


 そこまでは考えていなかったと唸る大宮。


「いや、でもそれも何とかなるんじゃない?」

「今みたいに手あたり次第探してくの~?」

「うう…」


 言葉を詰まらせてしまう大宮だが、高宮がここで助け舟を出す。


「伏見薙。元生徒会長のあの方ならご存知かもしれません。零さんの素性についてもいち早く気づいたようですし」

「あっ!」


 雨宮の脳内に浮かび上がる映像は、体育祭の後に零と伏見が話していた光景。


 たしかにあの人なら…。


「よし、決まりっ! 明日行こう! ちょうど土日だし!」

「目指せ~神宮家~!」

「覚悟を決めませんと…」


 既にやる気になっている彼女たちを止めることは雨宮には出来なかった。

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