50話 体育祭も終わり…
体育祭は無事に終わりを迎えた。
閉会式では、紅組の勝利とMVPの発表、そしてそれらの表彰が行われた。
MVPは霞北学園の体育祭の1500m走の記録を塗り替え、最後のリレーでは第一走者として紅組を優勝に導いた大宮が選ばれた。
そして、閉会式が終わり後夜祭が始まり、会場が盛り上がりを収縮させていく中、零たち2年の
Sクラスが生徒会のメンバーに呼ばれていた。
零が運動場の真ん中から少し外れたところに来たところで、全員が集まった。
そこには雨宮達と3年生のSクラスの5人、つまり現在の生徒会が総出で集まっていた。
「集まってくれてありがとう。人を待たせている人もいるだろうから、手早く話そうと思う。静、頼む」
生徒会長の伏見は、副会長の伊勢静に説明を促す。
「はい、まずは体育祭お疲れさまでした。大宮さんは大活躍でしたね。伏見会長はMVPを狙っていたので悔しがっておりました」
「おい」
伏見からチョップをされて少し嬉しそうにしている伊勢に頭痛を感じながらも、零は次の話を待った。
「話を戻しますが、これで私たち3年生は生徒会を引退して、貴方たち2年生に引き継いでいきます。マニュアルなどはまた生徒会室にあるものを見ておいてください」
「では、私たちは何のために呼ばれたのですか?」
雨宮が口を挟む。急かす意図は全くなく、純粋な質問だ。
「口頭で話しておきたい注意事項があったので。具体的に言えば、生徒会はSクラスで務めるため、メンバーが交代することがよくあるということです。話を聞く限り貴方たちは大丈夫なようですが」
その言葉を聞いて音宮がうう…という顔をしていたが、零は見て見ぬふりをした。
「万が一メンバーが変わった時は、きちんと対応してくださいね」
これはどうやら毎年言われているようで、伊勢も淡々と語る。
「あとは、生徒会長は生徒会から抜けてほしくないため例年なら学年1位がやることになっているのですが…」
「辞退します」
伊勢が言うと、ノータイムで零が返す。しかし、この回答には、この場にいる全員が不満を持ったようで、
「零くんがやってください」
「零くんがやらないのっておかしくないー?」
「零さんしかいませんよ」
「わ、わたしなんかやったら生徒会長不在になっちゃう…」
などという仲良しな4人の意見が飛んできた。
「いやいや、別に雨宮とかでも絶対にSクラスから落ちることないですし良いと思います。後任は雨宮でお願いします」
「零くんがやってくれないと嫌です」
「じゃあ、会長命令で、雨宮に役目を委託します」
「職権乱用を就任してすぐやらないでください!」
なかなか引かない雨宮に零が苦戦をしていると、横から思わぬ助け船がやって来た。
「いいんじゃないか。雨宮で。入江がやる必要もないだろう」
先ほどまであまり喋らなかった伏見に対して、雨宮がぎょっとする。
「な、なんでですか!?」
「逆になんでそこまで入江にこだわる? 別にお前がやればいいだろう」
「いや…それは…零くんが私たちのトップだからです!」
「別に一番できる奴がやらなければいけないわけではない」
「で、ですが…!」
「それに、あまり目立ちたくないようだからな」
伏見は零の方に目を向ける。零は伏見に対して、感謝の念よりも、勝手にこっちの事情を分かったように忖度をしてきたことに関して少し怒気を含んだ目を向ける。
だが、零はすぐに切り替えて雨宮の方を見るや否や「ほら、現会長もおっしゃっていることだし」と後ろ盾に使って宥めた。
「まあ、そうですね、ここは京華さんに生徒会長をやってもらうことにしましょう。零さんはリーダーって感じじゃありませんから。どちらかといえば、黒幕の方が似合っていますから」
「高宮、お前のその評価は後で修正してもらうからな」
高宮の二言目は無視するとして、高宮も零の味方をすることで、話の流れは決まった。
「では、雨宮さんを生徒会長ということで学校側には報告しておきますので。他の役割は後々決めてください」
伊勢がこう締めくくることで協議は終わりとなり、それぞれ解散となった。
「入江、ちょっといいか」
だが、零がその場を離れようとしたとき、伏見に呼び止められた。
「なんですか、自分も友達が待っているので、手短にお願いできますか」
もちろん嘘だが、零としてはあまり伏見と長い間話したいとは思えなかった。
「ああ、一つ聞きたいことがあってな」
「聞きたいこと?」
「ああ、そうだ」
伏見はここで一拍置いてから、聞き間違うことのないように、ハッキリと聞き取りやすい声で問う。
「お前は、神宮家の人間か?」
その言葉に大きな衝撃を受けたのは、零とその近くで隠れて聞いていた雨宮だった。




