45話 雨宮達の運動能力について
「というか、雨宮とかってどうなの? 運動とか」
「私ですか? 私はそこそこにできますよ。さすがに飛鳥ほどではないですけど」
「大宮と比較するな。実力がわからんだろ」
一番と比較されてしまっても、差の程度が分からない。
「零くんそれひどくない?」
「安心しろ。褒め言葉だ」
「人をハブっといて褒めてるのか~」
「高宮、雨宮について説明よろしく」
このままでは埒が明かないと感じた零は一番説明を丁寧に説明してくれそうな高宮に助けを求めた。
「京華さんはとても運動ができますよ。具体的なデータで言えば、体力テストは飛鳥さんに次いで2位でしたし、入学当時は9つの運動部に勧誘されていました」
「え、そうだったのか? あれでも雨宮って部活に所属してなかったよな?」
零は思い出して言う。
「あ、そうですね」
「なんで入らなかったんだ?」
「一応体験入部したのですが、周りの人のやる気があまり感じられなかったので…」
「なんとなく想像だが、お前のやる気についていくのは相当骨が折れるだろうな…」
「厄介者扱いしないでください!」
「安心しろ、褒め言葉だ」
「それで騙されるわけないじゃないですか!」
雨宮はぷんぷんという擬音語が聞こえそうな典型的な怒り方をしている。ちなみにその仕草は零にとってはドストライクであるため、零はSに部類されるタイプではないが(Sクラスにいるが)、雨宮をどうしてもいじめたくなってしまう。
「まあ雨宮のことは分かったが、高宮とか音宮はどうなんだ?」
「なんで私を無視した!」
「大宮はもう分かってるからいいんだ」
「それでも聞くのが乙女の正しい扱い方でしょー!」
「よし、じゃあ大宮、体重は何キロだ?」
「乙女に体重を聞くなー! え、というか話の流れ的に私の体重知ってるの?」
「安心しろ、知らない」
「これは本当に安心したよ!」
大宮は特に怒ったりはしないが、冗談が通じるタイプなので零はよくボケたりする。実はこのボケは、零が普通の人を装うためにSクラスに上がってから自然に身につけたテクニックだが、そのことには零すら気づいていない。
「で、話を戻すが高宮とかどうなんだ? たしかお前って…あんまり体が良くなかったんじゃなかったっけ?」
「いえ、別に零さんが思っているほど良くないわけじゃないですよ? ただちょっと体を壊しやすいだけで別に運動できないほどではありませんよ」
「そうなのか、じゃあ運動はできるのか」
「実はそこそこにはできますが、家の者が心配するので体育祭は見学ですね」
「そっか、それは残念だな」
「私は零さんを見てるだけで満足ですよ」
零は思わずしかめっ面をする。零は直接好意を伝えられることが乏しいため、このようなことを言われると反応に困る。
「じゃ、じゃあ音宮は?」
「え~わたしか~。わたしはそんな動きたくないんだけどな~」
「音宮、聞いているのはやる気じゃない。実力だ」
「うーん、人並みには動けるくらいだな~」
「人並みというと?」
「体力テストは大体10点だったかな」
「音宮、人並みという言葉を調べろ」
「え~でも京ちゃんやあすっちには敵わないからなあ」
「音宮、良いことを教えてやろう。体力テストは1~10の10段階評価だ」
「え~それくらい知ってるよ~」
「なぜ10段階評価でほぼ全て10なのに人並みになるんだ馬鹿者」
音宮の常識の無さというか常識に対する無頓着さに頭を抱えながらも、Sクラスの運動能力は非常に高いということだけ分かった零であった。