39話 事件は終わっても終わらない
「たっだいま~」
美味しいものを食べたのか、ご機嫌な様子の大宮が元気な声で零たちの部屋に戻ってきた。
大宮たちが部屋を出てから1時間と10分。ちゃんと約束通り1時間、零と高宮は二人きりになった。
しかし、部屋に戻った雨宮達が目にしたものは。
「ちょっ、高宮、邪魔だ! 携帯の画面が見えんだろ!」
「あらあら零さん、照れなくても良いのですよ?」
「お前ほどのやつが『照れる』という言葉を誤用するはずがないだろ! からかうのも大概にしろ!」
「でも先ほどから心臓の音が少々うるさすぎるのでは?」
「そ、それは勘違いだ。そうそう俺はもとから心臓が他人よりもうるさいんだ」
「零さんにしてはとても窮屈な言い訳ですね♪ 零さんほどの人がそんなありえないことをおっしゃるとは♪」
「その楽しそうな喋り方をまず直せ!」
零が携帯電話を横向きにして、ベッドの上で横向きになっている。
そして携帯と零の間に高宮がすっぽりとハマった形になっている。
「何にドキドキなさっているのですか? 女の子の匂いですか? それとも…感触ですか?」
と言い、高宮が零にもたれる。太ももを押し付け、胸を零の下腹部に当て、顔を零の胸板にキュッと寄せる。
「――っ!」
零はドキドキしている。普段は決して触ることのない女子の感触、匂い、それに声やそもそも女子と同じベッドに寝ているという状況に。
そして色仕掛け(?)を仕掛けた当の本人である高宮は本当に嬉しそうだ。
「零くん……何をやっているのですか」
と、傍から見たらとてもイチャイチャしている二人に、雨宮が心を無にして近づく。ゆっくりと小さな足取り。心なしか、顔は少し笑っているように見え、それがまた恐怖心を零に与えている。
「待て雨宮、どう考えても悪いのは高宮だろ!! 俺は無実だ!」
「では何故鼻の下伸ばして、ちらちらといやらしい視線を玲奈さんに向けているのですか」
「そ、そんなことは…」
ここで強く言い返すことができないのが零。恐怖を感じる相手に対し、嘘が付けないのはオタクだからだろうか。生物の防衛本能であろうか。
零にとって、高宮を女の子として意識してしまったことやちらちらと服の隙間からちらつく胸の谷間を見てしまったことは事実であるので、雨宮の責めに対して強く反論できなかった。
もちろん、病弱で小柄な体質の割に何故か人並み以上に膨らんだ胸が見えたのは高宮の計算だったが。
「変態の方と一緒に寝ることはできません。その辺の道路で寝てください」
「道路!? それはもしかして俺が車に轢かれるのを期待してるのか!?」
「早く」
「否定してくれよ雨宮ー!」
「零さん、私は『変態』な零さんと一緒に寝ても構いませんよ♪ どうぞ私のベッドで同衾しましょう♪」
「頼むからこれ以上火に油を注がないでくれ高宮ー!」
「京華ちゃんが嫌なら、私と一緒に隣の部屋でも借りて寝ようか? ちょうどダブルベッドみたい!」
「他の部屋を借りるのは妙案だけどシングルにしろ大宮!」
「え? そんなに私とくっつきたいのか~。やっぱり零くんも女の子の感触、もう一回味わいたいんだ?」
「一人で寝たいんだよ!」
「ぐぅ……ぐぅ……」
「音宮はどれだけ寝れば気が済むんだよ!」
「零くんのえっちー!」
「頼むから雨宮は誤解を解いてくれ!!」
激しい口論の末、結局零はホテルの人に無理を言って空いている部屋を貸してもらい、一人で寝た。
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感想では応援のコメントを頂いて、とても嬉しく、とてもありがたいです。
また零くんのことや学校に関してたくさん意見を頂き、言葉不足な点が多かったため、多少説明の描写を増やしたり、感想返信で疑問に対してお答えしましたので、どうしても設定で気になることがあれば、お手数ですがそちらを見ていただけるとありがたいです。
まだ設定や描写について疑問があれば質問してくださるとありがたいです。
設定のことについて聞かれるのは、自分の言葉足らずなせいですので本当に申し訳ありません。改善していきます。