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34話 大宮の時間

「じゃあとりあえずいろいろ見て回ろっか! お土産とか買いたいし! 零くんは買いたいお土産とかある?」

「うーん、そうだな。お土産は別にいらないけど八つ橋とかは買っておきたいかな。家で食べたいし」

「もしかして、結構零くんって食いしん坊だったりするの?」

「いや、そんなことないぞ。ただ家で食べるおやつのレパートリーが増えるだけだ」

「そ、そっか…」


 ちょっと残念な顔をしている大宮に気にすることなく、零は人混みの中を掻き分けていく。


(いけない、このままじゃ… この時間で一気に零くんとの距離を詰めるんだ…!)


「ね、ねえ! 手をつないでもいい?」

「? いいけど、どうしてだ?」

「い、いや、その…あっ、これだけ人がいるとはぐれちゃうから!」

「そうか」


 零はふっと言って顔を少し綻ばせながら、大宮の方に手を差し出す。


(もー、こういう仕草をするから…!)


 大宮は照れて赤くなった顔を、半身にして隠しながら零の手を握った。


「ほら、行くぞ。1時間じゃあんまり回れないぞ」

「う、うん…」


 しかし、大宮の気も知らない零の頭の中は八つ橋のことと、京都を舞台にしたアニメの聖地のことしかなかった。




「あ、このストラップかわいい!」と大宮が三毛猫が丸まったストラップを零に見せた。


「ほんとだな。別に猫が好きってわけでもないが、これはいい感じだと思う」

「え、じゃあこれ買わない? 二人で一緒のやつ!」

「別にいいが…二人で同じもの買って意味あるのか?」

「いいの! いいじゃん! いいでしょ…?」


 大宮が目に涙をうるうるさせながら零を上目遣いで見る。


 いつも美少女といても動揺しない朴念仁の零だが、この仕草にはさすがに耐えられない。思わず大宮を握っていた手に力が入る。


(あ、ちょっと握りが強くなった! これは緊張?)


 大宮の上目遣いは天然ものの為、自分の仕草が零をドキッとさせたことには気が付かない所が大宮の惜しいところである。


「じゃあこれ二つ買ってくるね!」とだけ言い残してちょっと小走り気味にレジに走っていく大宮を零は見ることができなかった。




 レジで目的の(ぶつ)を買い終えた大宮はスカートをひらひらさせながら零のもとに走って戻った。


「はい、じゃあこれをリュックに付けましょう!」

「え、今から付けんのか」

「うん! 早く付けてほしいし…」

「ほしいし?」

「うーん、なんでもない! ほら、早く付けて!」


 大宮は零のリュックを下させて、早く早く、と零を急かす。


(これで京華ちゃんやれいにゃんよりリードだー!)


 零の知らない所でぐっと拳を握る大宮。上機嫌になる大宮。合流した時の雨宮や高宮の驚いた顔を思い浮かべる大宮。


 だけど、まだ乙女たちの戦いは始まったばかりである。


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