33話 大宮の時間へ
「それにしても本当においしかったですね」
「あれは、ほんと絶品だったよ~!」
うなぎ屋から出てもテンションは上がったままの様子で、雨宮と大宮は語り合っていた。
「ていうか、音宮の体調も良くなったみたいだな」
「はは…。おなかが空いてただけみたいだった~」
「最初、体調悪そうだったくせに、うな重おかわりして、ひつまぶしにしてたもんな」
「いや~面目ない」
そしてうなぎを食べて以降すっかり元気になった音宮はいつもの音宮に戻っていた。
「そういえば集まるのは3時って三日月先生が言ってたけど、ここからどうするんだ?まだ1時間半くらいあるけど」
零は今後の予定を雨宮達に確認する。
余談だが、男一人に女4人であるこのパーティはどうしても零の発言権が弱くなり、行動は女子4人の裁量に任されていた。
もちろん雨宮達はみんな基本的に平等(高宮は音宮に発言権は無いと思っている)だと思っていたが、零がどうしても委縮してしまうのはオタクの性であろう。
「ここからは別行動ですよ。ここから一時間は飛鳥さんの時間ですので」
大宮の時間、というのは修学旅行の前に期末テストの結果によって決められた勝負によってできた時間のことだ。雨宮、大宮、高宮は零に勝負で勝ったため修学旅行中に一時間零と好きなように過ごせることになった。
ちなみに負けた音宮は、一か月間零の部屋に入ることを禁止されている。
「ああ、そうなのか。わかった。終わったら連絡を入れるからそれまで大宮と二人でいればいいんだよな?というか、お前たちはお互いの予定を把握していたのか」
「はい、そうですよ」
「一応聞いておきたいだが…。特に高宮お前の予定とか」
「きゃっ。乙女に予定を聞くなんて…もしかしてデートのお誘いですか?」
「違うわ。お前が要注意人物だからだ」
「私のことを一番に見てくださるんですね…♪」
「お前の頭はお花畑なのか…」
ちなみに高宮が下手なことを言っている間、大宮は高宮を、雨宮は零のことを睨んでいた。
「まあでも健全な予定でしたよね?ね?京華さん?」
「そうですね、特に問題のあるものではなかったと思います」
「雨宮がそう言うなら、大丈夫か」
と零が口にした瞬間、高宮がニヤッとしたのを見逃さなければ零は惨事に遭わずにすんでいたが、それは高宮の方が一歩上手だったということにしておこう。
「じゃあ零くん、一緒に回ろっかー!」
「ああ、そうだな」
「みんな、またあとでね~!」
大宮が大きく手を振ると音宮がのんびりと手を振って、雨宮が「はしたないことを…」と注意しようとし、高宮は余裕の笑みを返していた。
まだ修学旅行一日目。乙女たちの戦争は始まったばかりである。
タイトルを変えようと思いますので、急に変わっても驚かないでください。




