31話 京都到着
「ここが京都駅か~!2回目だ~!」
両手を挙げて自由奔放に叫んでいるのは大宮だ。なぜ2回目とか言うんだ…。
霞北高校の生徒が京都駅にぞろぞろと集まっている。大宮と同じように感動を露わにする者、静かに修学旅行に向けて闘志を燃やす者、早くもお土産を買いに行こうとする者などいろいろなタイプの人間がいる。
「はいはい~。Sクラスの生徒はこっちですよ~」
三日月先生が零たちを呼ぶ。
心なしか三日月先生もわくわくしているような…。そわそわしてるし、手を振ってやたらと急かしてくる。大の大人が修学旅行でテンションを上げるなよ…。まあ三日月先生はどちらかと言ったら小の大人だからいいのか。
というか、Sクラスだけ他の生徒と離れたけどなんだこの差は?前々から思ってたけど、この学校、Sクラスを特別扱いしすぎじゃないか?
「これから私たちはマイクロバスに乗って、はじめに清水寺に向かいます! そこで一旦自由行動となり、その時に昼ご飯も食べておいてください。また詳しい話はあっちについてからにしますね」
ご丁寧にマイクロバスまで控えているとは。普通のバスでいいんだけどなあ。
「では零さん、隣に座りましょうか」
「あ、れいにゃんずるい! 私が隣に座る予約してたのに!」
とくだらない話をしているのは高宮と大宮。そしてその一歩後ろでは先を越されたような顔をした雨宮と頭の中が八つ橋でいっぱいになった音宮がいる。
そして零はそんな口論をしている彼女たちを置いてさっさとバスに乗り、一人用の席を確保して座る。
――あいつらが隣に座ると面倒くさそうだ…。体力をきっちり残して清水寺に行きたい。
零はこの一心でバスに陣取っている。
……だがあっけなく、少し顔を赤くした雨宮に引きずられながらバスの最後列の5人の席に座らされる。
やはり零に選択肢や選択権などなかったのである。
ちなみにこうなった原因とも言える高宮は、こうなると予想していたのかくすくすと笑っていて、それがまた零にとってはとても腹立たしいことであった。