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3話 寮と大宮との出会い

「それにしても、すごいな...」


 夕暮れの中、寮に入った零はその庭の広さに驚かされた。生徒は15人しかいないのにこの広さ。きれいな噴水があって、その周りにはベンチが3つある。正面には鳥の石刻があり、ヨーロッパの王宮の庭を思わせる。


 そこをすり抜けて寮の扉を開けるとそこには女性のメイドがいた。


「ようこそ霞北Sクラス寮へ」


 透き通るような声でそう言われた。とても美人でモデルとして売り出した方がいいんじゃないかっていうくらいの美貌である。


 零が戸惑っていると、零の手にふれ、そして荷物を持ってくれた。


「この荷物は私が運んでおきますので、ゆっくり寮をまわって見ていただいていいですよ」と笑顔で言うので、かわいさと大きな胸に見とれながらそうしますと言って中に入った。


 食堂、談話室、大広間と見て回った。本当に豪華だ。食堂にはシャンデリアが飾ってあったし、廊下には赤色のカーペットが敷かれている。


 これがあると歩きづらいんだよなぁと思いながら廊下を歩いていると、後ろからぽんぽんとやさしく肩を叩かれた。後ろを振り向いて見るとそこにはピンク色の短い髪の女の子が立っていた。


 体はサラっとしていて、足は筋肉のあるしまった印象を受ける。身長は女子の平均より少し上といった感じ。何より…胸が大きい。


「君があの一位になった入江君かな?私は同じ二年の大宮飛鳥(おおみやあすか)です!たぶんこれから二年間お世話になるかな?私が5位より下にならなければ、だけどねっ」と言って笑って挨拶をしてきた。


 この女子生徒は大宮飛鳥。1年の時は学年3位だった子だ。性格は明るくて活発。陸上部に所属していて、大人に混じって日本選手権で走り高跳びの選手として活躍していた。


 そしてなんといってもモテる。死ぬほどモテる。一年の間に断られた男子の数は50人ほど。先輩後輩関係なく告白して、振られたらしい。しかし、断られても、怪訝そうな態度は見せないので、断られた男も大宮のことを嫌いになれず、二回目、三回目にチャレンジしていった奴もいるらしい。典型的な学校のアイドルである。


 …たしかにめちゃくちゃかわいい。Sクラスにいたせいで、あまり近くで見たことがなかったからか、たしかに玉砕上等で突っ込んで行く奴の気持ちも分からなくもない。スタイルが抜群に良く、特に陸上で引き締まった脚には魅了される。ーー零もその例に漏れない。


 そして、この子がこの寮にいるような器であることも納得がいく。普通はあの教師のように納得がいかなくてカンニングを疑ってもいいはず。それはそれで当たり前なのだ。急に満点を取るやつなんて怪しい。


 それなのに彼女は疑いもしないし、その上自分の方が学力が下であると判断している。そんなことは並の人間にはできないことだ。明らかに酒臭い教師とは住んでいる世界が違う。


 新たな出会いに胸が高まる。それは零がかわいい子に挨拶されたからというだけでなく、大宮や他の子も同じくらい凄いのだろうと思ったからである。


「こちらこそよろしく、大宮」と返事をして、いつもより早足で自分の部屋に戻った。

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